日本のスーパーでもお目にかかる、赤、黄、緑の巨大なピーマン。原産国がオランダであることが多い。また、花屋の店先へ行けば、オランダ産と記された球根や「アムステルダム直送」などという札がついた生花が美しくアレンジされているのを見かけることもあるだろう。

オランダを農業輸出額世界第2位にした推進力とは

 日本の九州とほぼ同じ面積しかない小国のオランダは、不毛といわれる岩塩混じりの土壌を持ち、北海からの強風が常に本土へ吹き寄せ、曇天がほぼ1年中続くという、お世辞にも農業に適しているとは言い難い国である。

北ホラント州の農地。この地から、農作物が世界へ向けて輸出される(筆者撮影、以下特記のないものは同様)

 ところが、農産物の輸出額は、なんと米国に次ぐ世界第2位(約773億ドル:CBS・オランダ中央統計省2013年度調べ)なのだ。

 輸出額が特に多いのは畜産製品(肉、乳製品)、トマトやピーマンなどの野菜、そして生花球根、植木などの園芸植物である。

 2008年のリーマンショックの影響で生じた経済危機による不況から回復の兆しがない悲観的な状況であるにもかかわらず、農作物の輸出額に限っては、順調に伸び続けている。

 特に生花の出荷率は、昨年の同時期と比較すると、約3%も増加している(CBS・オランダ中央統計省2014年度調べ)。

 農産物輸出額世界第2位の地位をこの国にもたらしたのは、「スマートアグリ」の導入によるところが大きい。農業従事者たちがコンピューターを使い、ビニールハウス内の温度、湿度、二酸化炭素の濃度、そして地中の温度などをITによって管理する方法だ。

10色以上の色を持つといわれるピーマンを育てる農家。管理はすべて、スマートアグリによるコンピューター制御で行われる

 実はこのスマートアグリが従来の農業にとって代わることになったのには、理由がある。

 1980年代終盤、スペイン、ポルトガル、ギリシアなど、南欧の気候風土を生かし大量生産された安価な農産物がオランダへ大量に輸入されるようになり、国産物の売れ行きががた落ちしたことがあった。

 従来のオーソドックスなオランダの農業法では、量産の面からして、とうてい太刀打ちできない。