(英エコノミスト誌 2014年12月13日号)

ユーロはまだ脆弱だ。問題はギリシャのみではない。

 ユーロ危機がギリシャで始まったのは、ほぼ5年前のことだった。

 すべてのユーロ導入国が一律に低利で借り入れを行う様子をのんびりと眺めていた投資家たちは、有能でない政府が自分では切り下げられない通貨で借り入れを行うことの危うさに突然気づいた。

 従って、前回のユーロ危機の発端となった国で再び煙が上がるという最近の展開には、不気味な相似が感じられる。

 直近の懸念増大の直接的な原因は、概ね有能なアントニス・サマラス首相率いるギリシャ政府が、大統領選挙を前倒しして今月後半に行うと決断したことにある。

大統領選の行方次第で解散総選挙

 ギリシャの大統領は象徴的な存在で大きな権限を持たない。だが、サマラス氏の推すスタブロス・ディマス氏がギリシャ議会で必要な数の賛成票を獲得できない場合には、議会は解散され、総選挙が行われる。

 世論調査の結果を見る限り、総選挙になればアレクシス・ツィプラス氏の率いるポピュリストの急進左派連合(SYRIZA)が勝つことになるだろう。

ギリシャ第2党も連立断念、融資打ち切りの恐れも浮上

世論調査でリードする急進左派連合(SYRIZA)のアレクシス・ツィプラス党首〔AFPBB News

 ツィプラス氏は、ユーロ圏からの脱退は望まないと話しているが、同氏は財政支出や税制について、ギリシャのユーロ圏残留を困難にする恐れのある公約を掲げている。市場が突然悲観的になったのはそのためだ。

 今回は、元欧州委員のディマス氏が今月末の投票で大統領に選ばれる可能性は十分ある。

 しかし、エーゲ海のほとりで新たに始まったこの悲喜劇は、ユーロ圏の改革がいかに進んでいないかを、そしてユーロ圏の政治にはまだ危険が潜んでいることをタイミングよく思い出させてくれた。