マット安川 ゲストに評論家の宮崎正弘さんを迎え、台湾の地方選結果の解説や香港デモの情勢、中国や日本への関係まで、幅広くお聞きしました。

台湾、民進党の大勝利は、中国に寄りすぎた国民党の自滅のおかげ

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:宮崎正弘/前田せいめい撮影宮崎 正弘(みやざき・まさひろ)氏
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。近著に『オレ様国家 中国の常識』『2012年、中国の真実』『中国が世界経済を破綻させる』など。メールマガジン『宮崎正弘の国際ニュース・早読み』を発行。(撮影:前田せいめい、以下同)

宮崎 11月の台湾の統一地方選で与党の国民党が大敗しました。台北市長選では、国民党は名誉主席の連戦さんの息子が出ましたが、何の政治実績もないお坊ちゃまで、市民の反発を買い大差で負けました。

 桃園市ではやはり名誉主席の呉伯雄の息子が出ました。ここは国民党の強い土地でまさか負けないと思っていたのに負けてしまった。台中ではベテランの13年間市長を務めた現職が大差で負けた。結局、6つの直轄市のうち国民党が勝ったのは1つ、新北市の朱立倫という人だけです。

 要するに土砂崩れです。かつて土井たか子(旧社会党委員長)さんが「山が動く」と言って、自民党が壊滅的打撃を受けましたが、あれと同じ現象です。つまり民進党は勝ちましたが、人気があったわけではなく、完全にアンチ馬英九総統、アンチ国民党感情で、それが票に結びついた。

 というのは、馬英九さんはずっと中国に対して腰が低く、妥協に次ぐ妥協をし、名誉主席の連戦や呉伯雄という人もすっかり中国になびいて、しょっちゅう北京に行って、あれやこれやと妥協的なことを言っていた。つまり台湾に対する尊厳などが日々失われていたわけです。

 それに対して今年3月、台湾の国会を若者たちが占拠しました。支持デモが50万人出て、市民が連日カンパや食料を持ってきて応援した。学生ボランティアは世界17カ国語に訳して主張を世界中に配信した。1つの革命が起きて、台湾政治が変わった。その変化がずっと底流にあったわけです。

 このあと2016年に総統選があります。国民党は誰を出すか。期待の人たちがみんな負けちゃって、唯一勝った新北市の朱立倫市長がおそらく出てくることになるだろうと思います。