(英エコノミスト誌 2014年12月6日号)

解散総選挙で予想される勝利によって、安倍晋三首相は構造改革でこれ以上後戻りする口実がなくなる。

安倍首相、消費増税延期を表明 21日に衆院解散

11月18日、首相官邸で記者会見し、消費増税の延期と衆院解散の方針を表明する安倍晋三首相〔AFPBB News

 日本の安倍晋三首相が自らを歴史的使命を担う指導者と見なしていることはまず間違いない。

 安倍氏は本誌(英エコノミスト)とのインタビューで、1860年代に古い秩序を打ち破り、日本を工業大国に変えた地元・山口県の革命家たちを引き合いに出した。当時と同様に今も、日本は外の世界に追い付くために自国を徹底的に見直さなければならないと安倍氏は主張した。

 また、当時と同じように、国内の反対勢力は結託しているという。「日本には広範囲に及ぶ変化が必要だった。改革は必ずしも大多数の人たちから支持されなかったが、歴史の先達たちはそれを成し遂げるために命を懸けた」と安倍氏は語った。

 安倍氏の支持者たちは、同氏がその経済計画にごく少ない政治資本しか使ってこなかったことに驚いている。2012年12月に地滑り的勝利を収めた後、安倍氏は経済の3本の「矢」の話で日本を沸かせた。その矢とは、急進的な金融緩和、追加の公共支出、硬直化した日本経済の仕組みの大胆な改革だ。

 安倍氏は極めて活動的なスタイルで国を統治し、専用機で数十カ国を訪問して外交攻勢に出た。しかし、安倍氏が繰り返し約束してきた市場志向型の徹底した改革をやり遂げることには、はるかに少ない意欲しか示してこなかった。

 安倍氏は今、自身の政権がすでに圧倒的多数を持っているにもかかわらず、アベノミクスとして一般に知られる改革プログラムを実行するために、もう1度有権者から信任を得ることが必要だと主張する。安倍氏が衆議院を解散して12月14日に実施を決めた総選挙は、安倍政権を守勢に立たせた一連の悪いニュースに続くものだ。

苦戦が続く日本経済

 家計支出を委縮させた今年4月の5%から8%への消費税引き上げの後、経済はいまだに苦戦している。12月8日に発表される国内総生産(GDP)改定値が7~9月期の景気縮小が速報値より小さく、ゼロに近い数字を示す可能性はあるとはいえ、直近2四半期連続のGDP減少は、日本がテクニカルな景気後退に陥ったことを意味している*1

 10月は、コア・インフレ率(増税の影響を除く物価上昇率)が前年同月比0.9%に低下した。原油価格下落の影響もあって、コア・インフレ率は今後さらに低下するかもしれない。このことは、安倍氏の金融の矢が、10月末に発表された追加金融緩和の後でさえ、2015年度に2%を目指すインフレ目標から大きく外れていることを示している。

*1=12月8日に発表された7~9月のGDP改訂値は、大方の予想に反して速報値から下方修正され、年率換算で1.9%減だった