(2014年12月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ユーロ、対ドルで13か月ぶり安値 トリシェ総裁の景気懸念受け

ブラジルなどの新興国が「通貨戦争」を叫んだのは2010年ごろのことだった〔AFPBB News

 多くの新興国、特に中南米の新興国が「通貨戦争」について盛んに文句を言っていたのは、そう昔のことではない。

 10年間にわたるコモディティー価格高騰が西側諸国の超緩和型の金融政策と相まって、新興国世界を資本で溢れかえらせ、為替レートを著しく過大評価された水準へ押し上げていた。

 そうした時代は終わった。ロシアと国際社会の緊張、中国の金融の安定性に対する懸念、強まる米国経済、そして何より急落するコモディティー価格を受けて、外国資本は出口へ向かった。

 過去3カ月間で、JPモルガンが算出する新興国通貨指数はドルに対してほぼ8%下落した。だが、この数字は、一部の弱い通貨の間で見られる著しい急落を覆い隠している。例えば、ブラジルのレアルは17%下落し、ロシアのルーブルはほぼ半値に落ち込んだ。

通貨のミスマッチにBISが警鐘

 ドル高は歴史的に新興国世界の混乱の前触れとなってきた。国際決済銀行(BIS)の最新の四半期報告書によると、再びそうなる可能性がある。

 1990年代後半のアジア危機以降、多くの新興国は賢明にも、自国通貨をドルにペッグ(固定)して海外で借り入れを行う習慣を絶ってきた。だが、金融機関以外の事業会社が、主に外貨建て債券を発行することで熱心にその仕事を引き継ぎ、利回りに飢えた西側諸国の資産運用会社がそうした債券に飛びついた。

 BISの報告書によると、新興国の借り手は2兆6000億ドル相当の国際債務証券を発行し、そのうち4分の3がドル建てで発行されたという。

 法人の借り手は外貨建て債券の低コストを利用したのかもしれない。だが、そうすることで、こうした企業は通貨のミスマッチを生み出した。一見安いドルを借りて地元資産の財源を賄ったのだ。

 だが、米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和を終了し、米国の金融資産の価格が上昇している中、調達環境がこれから急変するリスクがある。ドルが上昇するにつれ、新興国の借り手がドル建て債務を返済するコストが増大するだけでなく、借り手は担保としてより多くの自国通貨を差し入れなければならない。