(英エコノミスト誌 2014年12月6日号)

ロシアの大規模パイプラインの計画撤回は友好国に1つの教訓を与えた。

 天然ガスのパイプラインは、エネルギーだけでなく影響力も輸出する。ロシアが計画していた「サウスストリーム」プロジェクトは、欧州南東部で影響力を取り戻そうとする試みの柱となる400億ドル規模の旗艦プロジェクトだった。

 欧州連合(EU)が支持する、カフカス地方からガスを運ぶ「ナブッコ・パイプライン」が頓挫した後、ロシアの計画は多くの支持を得た。支持した国の中には、クロアチア、スロベニア、そして今、意志の強いビクトル・オルバン首相の下で独自の道を歩んでいるハンガリーのほか、伝統的にクレムリンと友好的な国々(オーストリア、ブルガリア、イタリア、セルビア)が含まれていた。

旗艦プロジェクトが突如撤回された理由

 今年、サウスストリームはEUの権威に課題を突きつけていた。

 欧州委員会は、パイプライン敷設計画は違法だと述べていた。EUの自由化されたガス市場の規則では、パイプラインとパイプラインを流れるガスの双方を企業1社が所有することができないからだ。

 サウスストリームの関係国は、規則の適用除外を求めていると語っていた。

 ところが12月1日、トルコを訪問中だったロシアのウラジーミル・プーチン大統領が突如、プロジェクトは中止されたと発表した。この方針転換はプーチン氏の味方を激怒させ、その他すべての人を当惑させた。一体何がロシアに、国の信用を台無しにするようなことを促したのか?

 方針転換の主な理由は、お金だ。原油価格の急落は、ロシアの国家財政と企業の財務に多大な負担をかけた。

 株式の大半を政府が所有するロシアの巨大エネルギー企業ガスプロムは最初からサウスストリーム計画を気に入っていなかった。サウスストリームは高くつくプロジェクトで、事業的な根拠よりも政治的な根拠(ウクライナを迂回し、欧州で影響力を買うこと)の方が圧倒的に大きかった。

 EUのガス消費は減少している。ガス価格も下落している。一方で競争は激化している。従来、ロシアに100%依存していたリトアニアは、液化天然ガス(LNG)の輸入基地を開設したばかりだ。