この11月、オランダ、デンマークにソーシャルイノベーションの視察へ行ってきました。グローバル人材にも必要な多くの示唆を得られましたので、今回は簡単にご紹介したいと思います。

 主なテーマは、フューチャーセンター、オープンイノベーション、コ・クリエーション&シェアエコノミー、デザイン等です。

対話によるイノベーションを生む場

 フューチャーセンターとは「組織(企業、政府、自治体など)が未来にかかわる戦略・政策の実践を目的に据え、当事者やステークホルダーが対話を通じて解決手段や新たなアイデアを発見・共有し、相互協力の下で実践するために設ける“場”」(フューチャーセンター研究会による)です。

 特に欧州では政府関係の活動がさかんで、今回はオランダのシップヤードとLEF、デンマークのマインドラボを訪問してきました。

●シップヤード

 オランダ国税庁のフューチャーセンターとして、知的資本主義の考えのもと主に職員のブレーンパワーを引き出す目的で設立されました。税金の使途をきちんと説明することはもとより、国民の幸福のために税金システムをどうデザインするかを考えるために、常に職員がクリエイティブに思考できる環境を整えています。

 そのキーワードは「license to disturb」。課題を乗り越えるためには、これまでの思考の枠に留まらず柔軟に考える。創造的なアイデアのためには、この場では何を言っても安全であると思ってもらうことが大事ということです。

多様な選択肢から適切なスペースを選ぶ(写真提供:筆者、以下同) 拡大画像表示

 そのために18ほどの多様なスペースが用意され、専属のファシリテータがテーマに応じて適切なスペースを選びワークショップを運営します。年間100グループぐらいがワークショップを行っているそうです。

 興味深い取り組み事例としては、シップヤードに隣接する庭で低所得者の方々を雇い、とれた野菜をフードバンクとして食料不足の人々へ配給するという活動です。

 このようなソーシャルリターンを生むプロセスに職員が関与することで、これからの新しい経済体系(シェアエコノミー等)の在り方に合わせた税制システムの立案などに、いずれ還元されることが期待されています。