(英エコノミスト誌 2014年12月6日号)

石油の経済学が変わった。一部の企業は破綻するだろうが、市場は今よりも健全になるはずだ。

 石油輸出国機構(OPEC)の公式な憲章には、「国際石油市場における価格の安定化」という目標が掲げられている。その点では、OPECはあまり良い仕事をしてきたとは言えない。原油価格は、1バレル115ドル近くに達した6月に下落を始め、いまや70ドルに近づいている。

 40%近いこの急落の一因は、停滞する世界経済だ。世界の石油消費量が、市場の予想よりも少なくなっているからだ。また、市場予測よりも多くの石油を生産してきたOPEC自体にも責任の一端がある。だが、最大の原因は、米国のノースダコタ州やテキサス州の石油業者にある。

 石油価格が1バレル110ドル前後で推移していたここ4年の間に、米国の石油業者が、それまで利用不可能とされていたシェール層の石油の抽出に着手した。彼らは一心不乱に掘削を進め、2010年以降、新たに掘られたシェール油井は恐らく2万本に上る。サウジアラビアの10倍を超える数だ。

 こうした活発な掘削により、米国の産油量は30%以上増加し、日量約900万バレルに達している。この数字は、サウジアラビアを100万バレル下回るにすぎない。シェール業者とシャイフ(アラブの首長)との競争が石油不足の世界を引っくり返し、石油が余剰に転じたわけだ。

燃料の注入

OPEC、世界の石油需要予想を引き下げ 経済低迷で

米国の一般的なドライバーは年間800ドル節約できる計算になる〔AFPBB News

 原油価格の下落は、世界的な経済成長にとって、アドレナリン注射のように作用する。原油価格が40ドル下がれば、およそ1兆3000億ドルの富が生産国から消費国へと移転する。

 2013年にガソリン代として3000ドル使った一般的な米国のドライバーなら、年間800ドル節約できる計算だ。これは2%の昇給に相当する。

 この思いがけない利益を特に享受しているのが、ユーロ圏、インド、日本、トルコなどの石油輸入大国だ。そうした棚ぼたの資金は、政府系ファンドに貯め込まれるよりも支出に回される傾向が強いため、世界の国内総生産(GDP)は増加するはずだ。

 また、原油価格の下落により、すでに低いインフレ率がいっそう下がるため、各国の中央銀行は金融緩和に向かうかもしれない。米連邦準備理事会(FRB)は、金利の引き上げをもうしばらく先送りするだろう。欧州中央銀行(ECB)はもっと大胆に、デフレ回避策としてソブリン債を購入するだろう。