(2014年12月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 西側諸国の政治家が最も懸念すべきテーマは何だろうか。経済成長だろうか、格差の拡大だろうか、環境問題だろうか、それとも教育問題だろうか。最近の議論の様子から判断するなら、正解はこの4つの中にはないように思われる。

 実はこの1カ月間に、米国のバラク・オバマ大統領と英国のデビッド・キャメロン首相の両首脳が移民問題について重要な講演を行っている。また先週末にはスイスで国民投票が実施され、同国への移民流入を事実上終了させる提案が反対多数で否決された。しかし、スウェーデンやイタリアなど他の欧州諸国ではこの1年間で、移民の受け入れに反対する政党が大きく勢力を伸ばしている。

リベラルな方向へ進む米国と、さらに右寄りに傾く欧州

 西側諸国では明らかに、移民問題が政策論争の中心になっている。だがこの数週間で、欧州と米国における議論は異なる方向に向かうこととなった。

オバマ米大統領、不法移民500万人の救済策を発表

11月20日、米首都ワシントンで、移民制度改革についての国民向けテレビ演説を行ったバラク・オバマ大統領〔AFPBB News

 オバマ氏は2週間前、数百万人に上る不法移民を国外退去の可能性から守る計画をぶち上げた。これらの提案は激しい意見対立を引き起こしたものの、最終的には米国内の議論をよりリベラルな方向に推し進めるのに寄与することになりそうだ。

 欧州では対照的に、英国独立党(UKIP)やフランスの国民戦線(FN)など反移民の立場を取るポピュリスト政党の台頭が、今でも議論を右寄りの方向に推し進めている。

 キャメロン氏は先日、ほかの欧州連合(EU)諸国からの合法的な移民に対する福祉手当の支給を制限したり、仕事が見つからない移民を国外退去させたりする計画を打ち出した。

 一方、海峡の向こう側のフランスではニコラ・サルコジ前大統領(また将来の大統領かもしれない)が、EU域内の国境の検問を廃止したシェンゲン協定の撤回を求めている。

比較的貧しい国々から移民を引き寄せる磁石

 使われる言葉こそ異なるものの、富める国々における移民関連の数字は目を見張るほど似ている。経済協力開発機構(OECD)の推計によれば、外国生まれの住民の割合(2011年現在)は米国、英国、ドイツ、フランスでいずれも11~13%だという。スイスは例外的で、この割合が27.3%に達している。移民に関する議論が特に熱を帯びるのは、このためかもしれない。

 富める国々が比較的貧しい国々から移民を引き寄せる磁石になっていることは明らかで、その磁力はますます強くなっている。OECDによれば、2000~2010年の世界全体の移民のフロー*1はその前の10年間の2倍に達している。

*1=この10年間に新たに移住した人の数のこと