(2014年12月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

浙江省義烏市の巨大卸売市場に並ぶ観光グッズの数々(写真:iamdanw

 中国・浙江省の義烏(イーウー)市にある「中国小商品城」は、「ウォルマートを大きくしたやつ」と呼ばれることも多い、60万平方メートルの広さを誇る世界最大級の卸売市場だ。

 ここには雨具からボタン、世界各地の都市を称える冷蔵庫マグネットに至るさまざまな商品が大量に並んでおり、中東やロシア、アフリカなどから仲買人が品定めにやって来る。商品の多くは、この都市の郊外に点在する小さな工場で作られている。

 しかし、年末が近づく中、米国や英国、オーストラリア、日本などに輸出するプラスチック製クリスマスツリーを製造しているチャイナ・チョンシェン・クラフツ社のクオ・ウェイ工場長は対応に苦慮している。同社は一部の製品を、製造原価を下回る価格で販売しているそうだ。

 「売上高は持ちこたえているけれど、価格については、お客様から値引きを求められている。皆、景気が悪いんだと言っていますね」とクオ氏は言う。「弊社の商品の中には、もう利益が出ないものもあるが、顧客に喜んでもらえるように製造を続けている」

 クリスマスツリーの値段が下がることは、西側諸国の消費者には朗報に聞こえるかもしれない。しかし中国の物価の下落は、世界中に新たな脅威を突きつける。今日では多くの国々が、冴えない需要と心配になるほど低いインフレ率という問題を抱えているからだ。

過剰生産能力に苦しむ製造業、生産者価格はもう3年近くデフレ

 中国で大量に作られる製品が高度経済成長と投資によって吸収された10年間が終わった今、義烏市にあるような中国の工場の多くは、在庫をなかなかさばけずにいる。

 需要が中国内外で縮小し、多くの産業が慢性的な過剰生産能力に苦しんでいる。特に困っているのは鉄鋼やガラス、セメントといった基本的なコモディティー(商品)の業界であり、価格を下げ続けるしかないというケースが多い。

 その結果は中国の公式統計にも反映されている。統計によれば、いわゆる生産者物価はもう3年近くも明らかなデフレに陥っている。それ以上に心配なのは恐らく、10月の消費者物価上昇率が前年同月比1.6%というほぼ5年ぶりの低水準に落ち込んだことだろう。

 「皆、ユーロ圏が問題を抱えていると思っているだろうが、中国の問題の方がはるかに大きい」。フランスの大手金融機関ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、アルバート・エドワーズ氏はそう語る。