(英エコノミスト誌 2014年11月29日号)

ジャン・クロード・ユンケル欧州委員長の投資パッケージは笑えるほど不十分だ。

EU、次期欧州委員長にユンケル氏を指名 英国は反対

18年にわたりルクセンブルク首相を務めたジャン・クロード・ユンケル氏は11月1日に欧州委員会委員長に就任した〔AFPBB News

 欧州はひどい経済的苦境にある。ユーロ圏の経済成長は1%を下回る水準から抜け出せず、失業率は11%を上回っている。インフレ率は0.4%前後で推移しており、欧州中央銀行(ECB)の2%の目標にほど遠く、危険なほど全面的なデフレに近い。

 パリに本部を置く先進国クラブの経済協力開発機構(OECD)は11月末、ユーロ圏は停滞にはまり込んでいると警告し、ユーロ圏が世界経済の足を引っ張っていると付け加えた。

 ここへローマ法王までが加わり、欧州連合(EU)を「老いて、やつれている」と呼んだ。

 このような状況は間違いなく、緊急かつ決定的な対応を必要とする。11月26日、欧州委員会の新委員長のジャン・クロード・ユンケル氏は然るべく、自身の任期の最重要案件と見なすものを明らかにした。当局者らが欧州で追加需要を創出する最善策と主張する3150億ユーロ(3920億ドル)規模の壮大な投資計画だ。

 しかし、ユンケル氏が掲げた総額は立派に聞こえるが、裏側の金額は取るに足りないものだ。また、この投資計画が欧州委員会が述べているように成長に弾みをつける可能性は極めて小さい。

 まず、計画は早くても2015年半ばまで始まらない。次に、欧州委が生み出すことを期待している追加支出は3年にわたって実行される。さらに、ユンケル氏の3150億ユーロの大半は金融技法に基づくもので、多額の民間資金をテコとして呼び込むことを期待して少額の公的保証を利用する。その一部は、いずれにせよ、他のプロジェクトに貸し出されていたお金だ。

 「新規資金」として謳われている160億ユーロでさえ、錯覚だ。ほぼ全額がEU予算の未使用部分から再利用されるのだ。資金の別の部分は、繰り返し話題になる欧州投資銀行(EIB)の拡大から来るが、この機関はリスクのあるプロジェクトについては動きが遅く、慎重なことで悪名が高い。

 欧州委は、各国政府が独自の貢献をして委員会の投資計画を支援することを期待している。だが、圧倒的に最大で最も信用力の高いドイツが3年かけて公共投資に100億ユーロを費やす程度のことしか話しておらず、しかも来年に財政を均衡させる約束を緩めないという時には、各国政府の貢献が実現する可能性は低そうに思える。

全くもって不十分

 投資計画の臆病さの責任を負うべきは、ユンケル氏独りではない。欧州委には独自の資金があまりない。委員会の予算はもっとうまく使うべきだが――予算の40%を農家への補助金に充てているのは馬鹿げている――、予算を足しても、EUの国内総生産(GDP)合計額の1%にも満たないのだ。

 ユンケル氏が提案した、民間資本の呼び込みを目指す機関「欧州戦略投資基金(EFSI)」とEIBの拡大は、どちらも価値あるアイデアかもしれない。だが、必要になる法律を可決し、適切なプロジェクトを見つけ、その後、資金を調達するには、数カ月どころか、恐らく数年かかるだろう。