米国議会の上下両院で共和党が多数派となったことは、米国のアジア政策の強化をもたらす。よってアジアにとっては朗報である――。

 こういう見解が米国の専門家たちから打ち出された。共和党議員が多数を占める議会は、環太平洋経済連携協定(TPP)の推進や日本やオーストラリアとの同盟の強化、中国の軍拡への抑止策の増強などをこれまでより積極的に進め、米国の国防予算の削減にもブレーキをかけることになる、という展望である。

 中間選挙での共和党の圧勝が日本にも好ましい材料を与えるという見通しは、11月12日の当コラムでも報告した(「オバマの大敗はなぜ安倍政権にとって朗報なのか? 3人の共和党上院議員が強力な援軍に」)。今回、米国側でこうした展望を示したのは、アジア安全保障の専門家のエルブリッジ・コルビー氏とリチャード・フォンテーン氏である。両氏は11月中旬に大手紙「ウォーストリート・ジャーナル」に論文を寄稿し、その見解を明らかにした。

 フォンテーン氏はワシントンの安保専門の研究機関「新アメリカ安全保障センター(CNA)」の所長、コルビー氏は上級研究員を務める。ともに米国政府の国防総省、国務省、国家安全保障会議などで、アジアや安全保障、軍事の政策を高官として担当してきた。

共和党の協力でTPPの推進が容易に

 この共同論文は「共和党多数の議会はアジアにとって良いニュースである」と題されていた。副題は「共和党は貿易、安全保障、人権に関して(アジア諸国の)より良きパートナーとなる」であった。

 論文は、まず、オバマ政権と議会の民主党が、中東や欧州での危機に関心を奪われ、アジアに目を向けることが少なくなってきたと指摘し、「やはりアジア・太平洋地域は世界全体の経済ダイナミズムと戦略的競合の中心舞台であり、米国は政党の如何にかかわらず、中期、長期にこの地政学的な現実に対応して、より多くの注意と資源を向けなければならない」と強調した。