(2014年11月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

諸外国から見ると、ドイツのマクロ経済は別世界(写真:Thomas Wolf, www.foto-tw.de

 ドイツの経済学者とエコノミストは、大雑把に2つのグループに分けられる。ケインズを読んだことがない人たちと、ケインズを理解していない人たちだ。

 ドイツの経済的主流派を保守派と表現することは、的外れだ。確かにドイツの主流派には、米国その他諸国の新古典主義、または新保守主義の学派と重なるところがある。

 だが、ドイツの主流派と米国のティーパーティー運動との比較がどれほど説得力があるように見えたとしても、検証には耐え得ない。ドイツの正統派の経済学は、中道左派と中道右派にまたがっている。多少なりともケインズ主義の知識を持つ唯一の政党は旧共産党だけだ。

投資不足や過剰な経常黒字を全く批判しない経済諮問委員会

 正統派の教義を示す好例が、政府に助言する公的機関「ドイツ経済諮問委員会」が先週発表した年次報告書である。委員会は、投資不足や過剰な経常黒字、過度に熱心な財政規律を批判しなかった。その代わり、最低賃金と、年金受給開始年齢の若干の緩和を批判した。

 言い換えれば、委員会はアンゲラ・メルケル首相率いるドイツ政府が一段と厳しい姿勢を取ることを望んでいるのだ。

 ドイツ人には、ドイツ独特の経済的枠組みを表す言葉がある。「オルド自由主義」がそれだ。

 その起源は完全に理にかなっていた。1933年の自由民主主義の崩壊に対し、ドイツのリベラルなエリート層が出した答えだったのだ。

 オルド自由主義は、制限のない自由主義体制は本質的に不安定であり、自らを支えるためには規則と政府の介入が必要だとの見解から生まれた。政府の仕事は、市場の欠陥を正すことではなく、規則を定め、執行することだというわけだ。

 1945年以降、オルド自由主義は中道右派の支配的な経済原理となった。1990年代になると、ドイツ社会民主党(SPD)がオルド自由主義を取り入れ始め、最終的にゲアハルト・シュレーダー首相による2003年の労働・福祉改革に至った。