オランダは、「ヨーロッパの中国」なる別称を持つ国である。特に隣国のドイツやベルギーの人びとからそう呼ばれているのだが、なぜ日本の九州とほぼ同じ面積の小国オランダが、大国の中国と並び称されるのだろうか。

国を挙げて自転車利用を推進したオランダ

 これには理由がある。キーワードは自転車だ。中国と同様にオランダでは、人びとが生活する上で自転車が不可欠な存在だからなのである。

 オランダ人の自転車所有率は国民1人につき1.1台である(CBSオランダ統計省調べ・2014年度)。通勤、通学はもちろん、余暇のツーリングや健康維持ツールとしても、自転車は人びとのあらゆる生活の場で最大限に活用されている。

 国の面積が狭く、各都市間の距離も短くアクセスが簡単なこと、そして、国土が平坦なので自転車専用道路の設置が比較的容易なことなど、自転車を利用するための自然的好条件も揃っている。

 また、環境問題に強い関心を寄せる国民たちが、CO2排出軽減を目的とする反環境汚染に賛同し、自動車ではなく自転車を国民の「足」として選択したことも、自転車王国を築きあげた重要な理由のひとつとなっている。

マーク・ルッテ現首相(左)も自転車で通勤するのが日課だ(写真提供:AD.nl)
赤い部分が自転車専用道路。自動車は自転車に細心の注意を払って運転する必要がある(筆者撮影、以下同)