(2014年11月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

欧州中央銀行の新しい本部ビル、工事着工へ

欧州中央銀行(ECB)の新本部ビルの完成予想図。低階層の茶色い建物が旧グロスマルクトハレで、内部構造は新しくしながら外観は残される〔AFPBB News

 ユーロ圏の金融政策を司る欧州中央銀行(ECB)の新本部の下に、独フランクフルトの歴史上、極めて陰惨な出来事の舞台となった湿っぽい地下室がある。

 完成が目前に迫った新本部ビルは、フランクフルト市オステンド地区の巨大な「グロスマルクトハレ」の跡地に建つ。長年にわたり、活気あふれる果物・野菜市場だった場所だ。

 11月初め、2600人以上の中央銀行職員が新本部である45階建てのガラス張り高層ビルに引っ越し始めた。

 1941年から1945年にかけて、その4倍近いフランクフルトのユダヤ人がこの建物の地下室に詰め込まれた。地下室は隠れた待合室としてゲシュタポに借り上げられており、ユダヤ人は到着後数時間で、電車に乗せられ死に向かって連れて行かれた。

ユダヤ人強制移送の歴史の舞台

 グロスマルクトハレの東棟の地下にあるこれらの部屋は、ここに抑留された1万人のユダヤ人を追悼する記念館の一部となる。彼らはその後、故郷から収容所へ送り込まれることになり、その特権のために50ライヒスマルク払って、通常は数百人、時として数千人単位で強制移送された。

 地下室は事実上、手つかずのままで、犠牲者の証言を刻んだ銅板を別にすれば、壁には何の飾りもない。ある銅板には「私の行く手に何が待ち受けているのか分からない。もしかしたら、それは良いことかもしれない」と刻まれている。また、別の銅板には「地獄だった。一晩中検査があり、金切り声と嫌がらせがいつまでも続く」とある。

 犠牲者たちが通った通路や線路も併設された記念館のがらんとしたデザインは、地元のユダヤ人たちに、この場で起きた悲惨な出来事にふさわしい造りだと見なされている。

 フランクフルトのユダヤ人社会を代表するザロモン・コーン氏は、コンペで受賞したデザインは「最も簡潔な方法で、この強制移送の場において、いかにしてフランクフルトのユダヤ人の絶滅に向けた針路が決まったかをまざまざと甦らせた」と言う。

 歴史学者でフランクフルトのユダヤ博物館の副館長を務めるフリッツ・バックハオス氏は、記念館は「市の日常生活の一部である(グロスマルクトハレのような)建物が犯罪の現場だったことをはっきりさせる」と言う。さらに、「フランクフルトのユダヤ人の迫害と殺害を忘れないことは市の基本的な仕事だ。記念館はこれに貢献するものだ」と付け加える。