(英エコノミスト誌 2014年11月1日号)

脆弱な国内経済が日本企業を海外での事業拡大に駆り立てている。

 ショッピングセンターの開店記念式典に一国の首相が立ち会うことはめったにないが、プノンペンのイオンモールは、どこにでもあるようなショッピングセンターではない。日本企業が建設した複合施設はカンボジア最大規模で、スケートリンク、テレビ局のスタジオ、ボーリング場まで備えている。

 式典に参列したカンボジアのフン・セン首相にとっては、イオンモールは日本の投資の象徴だ。東南アジア各国の政府が日本企業に秋波を送っており、大量の日本円が東南アジアに押し寄せている。

日本の東南アジア投資が倍増、対中投資の3倍近くに

 東南アジア地域に対する日本の投資は昨年、2兆3000億円(240億ドル)に倍増し、過去何度目かになる大幅な増加を記録した(図参照)。

 多額の投資の一部は、国内での投資をけちり、その結果、約229兆円に上る現預金をため込んだ日本企業によるM&A(合併・買収)だ。

 携帯電話大手のソフトバンクは先日、インドネシアの電子商取引企業トコペディアに対する1億ドルの投資を率いたばかりだ。

 コングロマリット(複合企業)の東芝は5年間で東南アジアに10億ドル投資すると約束した。1年前、邦銀最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループはタイのアユタヤ銀行の株式の72%を5360億円で取得した。

 日本による投資の第一波が押し寄せた1980年代と1990年代には、資金がタイ、マレーシア、シンガポールに流れ込み、各国の自動車・電機産業を築き上げた。そうした資金の流れは1997~98年のアジア金融危機の後に概ね止まり、日本企業は中国の巨大で安価な労働力に焦点を合わせ始めた。

 だが、いまや中国で人件費が着実に上昇し、日中間の政治的緊張が続く中で、東南アジアが再び魅力的に見えるようになった。昨年、カンボジアなどに対する日本の投資が増加したにもかかわらず、日本の対中投資は4割近く落ち込んだ。

 中国はまだ日本にとって最大の貿易相手国だが、日本企業は昨年、東南アジアに中国の3倍近い規模の投資を行った。東南アジア諸国にとっても、日本は中国に対する重要なヘッジとなる。