(2014年10月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 スペインの首都マドリードに住む比較的貧しい人たちの多くにとって、食卓に食べ物を並べる日々の苦労は、市の北の外れにある巨大な赤レンガの倉庫で終わる。中央食料銀行(フードバンク)である。

 パスタやコメ、ビスケットなどの主食とともに、オレンジやピーマンの木箱が天井まで山積みになったこのフードバンクは、マドリード各地に続々とできたスープキッチンやその他の食料慈善事業の主な供給源になっている。5万キロの食べ物、飲み物が毎日この倉庫から出て行く。

景気後退から脱して1年経ってもフードバンクに依存する人は増加中

 職員は、スペインの危機が始まってから寄付が急増しているが、需要はそれ以上のペースで伸びていると指摘する。過去5年間で、スペインの55のフードバンクに依存するスペイン人の数は78万人から150万人に急増し、景気回復の兆候が増えているにもかかわらず、その数は増え続けているという。

 「マクロ経済のレベルでは、状況が改善していることが分かる。だが、我々が接する人たちには変化が見られない」。スペイン食料銀行協会のニコラス・パラシオス会長はこう言う。

 「失業手当が期限切れになったり、貯金をすべて使い果たしたりする人がますます増えている。そして、いくらか所得があったとしても、数百ユーロでは到底家族を養えない」

 パラシオス氏の観察は、スペイン経済の見通しに関する最近の楽観論の高まりに痛烈な反撃を食らわすものだ。

 スペインは1年以上前に景気後退から抜け出しており、来年にはユーロ圏の大国の中で最も急速な成長を示すと見られている。失業率はようやく低下し始めており、スペインの金融部門――非常に長い間、欧州全体の悩みの種だった――は、欧州中央銀行(ECB)の最近のストレステストで「潔白」のお墨付きを得た。国際通貨基金(IMF)でさえ、予想以上に速いスペインの景気回復を絶賛している。

長期失業者の苦悩

 だが、エコノミストやアナリストは、最近の回復は深刻な社会危機を軽減するにはほとんど効果がないと警告する。特に、急速に膨れ上がるスペインの長期失業者や、勤労所得が全くなく、いかなる形の政府支援に対する権利も持たない70万超の家計の運命に大きな懸念がある。

 もう1つの大きな不安は、危機で最も大きな影響を受けた個人の多くが非常に低い能力しか持たず、労働市場から大きく切り離されているため、今後数年間で景気回復が加速したとしても、新たな仕事を見つけるのに苦労することだ。