(2014年10月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

米NY州、エボラ対策の強制隔離を緩和 オバマ政権が圧力

自分か親友、親類のいずれかがエボラ出血熱にかかるだろうと考えている米国人の割合は45%を超えているという(写真は米ニューヨーク市で、防護服を着て路上に立つ男性)〔AFPBB News

 これまでの死亡率に基づいて計算すると、米国人がエボラ出血熱で亡くなる確率はキム・カーダシアン*1と結婚できる確率よりも低い――。そんなツイートが発信されている。

 しかし、科学的な議論に固執する連邦政府と、一人また一人とパニックに感染していく遊説中の政治家たちとの間で多勢に無勢の綱引きが行われている現状は、冗談では済まされない。

 カイザー・ファミリー財団によれば、自分か親友、親類のいずれかがエボラ出血熱にかかるだろうと考えている米国人の割合は45%を超えている。また、ギニア、シエラレオネ、リベリアと米国の間の渡航禁止を支持する人の割合も4分の3を超えている。

米国人を襲うパニック、選挙をにらんだ慌ただしい動きも

 リードしているのは共和党だが、このパニックは次第に超党派の様相を帯びつつある。ここ数日で3つの州――ニューヨーク、イリノイ、ニュージャージー――が、エボラ熱の患者と接触した人全員を21日間強制隔離することを決めた。3州のうち2州の知事は民主党で、どちらも来週行われる選挙で再選を目指している。

 連邦議会の中間選挙に臨む民主党の候補者たちは、渡航禁止に反対するバラク・オバマ大統領の姿勢は受け入れられないと、大慌てで反発している。批判されているケイ・ヘイガン上院議員(ノースカロライナ州)や厳しい戦いに臨むジーン・シャヒーン上院議員(ニューハンプシャー州)などがそうだ。

 このパニックの根底には、当局に対する国民の強い不信感がある。この不信感は、エボラ熱への連邦政府の対応を主導している疾病対策センター(CDC)など、エボラ熱以外の分野では尊敬を集めている機関にも向けられつつある。オバマ氏の発言を国民のかなりの部分が自動的に割り引いて聞いてしまうことも助けにならない。

 しかし科学――そして、科学を振りかざす政府機関――への不信感ゆえに、相反する主張をする人々が団結するようになっている。子供への3種混合ワクチンの接種、水道水へのフッ素添加、そしてその他の公衆衛生キャンペーンに反対する草の根運動家たちは、科学的な証拠を受け付けないように見える。

*1=米国の人気タレント。ラップ歌手の夫との間に娘がいる