(2014年10月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 メロドラマの作家は、このような脚本を書くことを夢見るだろう。伝統的に控えめで総意を志向するスカンジナビア社会で珍しい企業ドラマが繰り広げられている。物語はノルウェーの肥料会社ヤラ・インターナショナルを中心に展開している。

 今年初め、政府系企業のヤラに長らく影を落としていた贈賄スキャンダルで、元最高経営責任者(CEO)のトルライフ・エンゲル氏を含む4人の元経営幹部が重大な汚職容疑に問われることになった。4人とも容疑を否認している。ヤラ自体がリビアとインドで賄賂を贈った罪で、ノルウェーの企業史上最大となる2億9500万ノルウェークローネ(4500万ドル)の罰金を科された。

白紙となった合併交渉、CEOを2人も失い、会社の評判に大きな傷

 この一件で深い傷を負ったヤラは4月、会長を交代させ、取締役会を刷新し、地元のライバル企業から尊敬を集めているCEOを引き抜いた。だから、このタイミングは、一見してノルウェー政府からの強固な支持もないまま、大転換を図る合併交渉に乗り出すのに絶好の時機だとはとても思えなかった。

 だが、ヤラがやったのは、まさにそれだ。そして同社はその過程で、合併を巡って現職CEOと後継指名された次期CEOの双方を失った挙句、合併交渉を白紙撤回される羽目になった。

 「これはちょっとしたショックだった。事態はメロドラマと化している」。ベルゲンのNHHビジネススクールのパウル・グッデルハム教授はこう語る。

 ヤラの最新のドラマが始まったのは1カ月前、ヤラと、ヤラより規模の大きい米国の競合企業CFインダストリーズとの合併協議がリークされた時のことだ。合併すれば、合計の株式時価総額が約270億ドルに上る窒素肥料市場の首位メーカーが誕生するため、理論上は、ある程度理にかなっているように見えた。

 だが、両社の協議はすぐに問題に突き当たった。10年前にヤラを本体からスピンオフ(分離・独立)させたアルミニウム大手ノルスク・ハイドロのCEO、スベイン・リカルド・ブランツェ氏が、ヤラの新CEOに就く決断を撤回した。合併協議について知らされていなかったと同氏は言う。

 そのブランツェ氏が後を継ぐことになっていたCEOをヤラ取締役会が解任すると、ドラマがもう一段盛り上がった。ユルゲン・オーレ・ハスレスタッド氏はいずれにせよ2月に退任することになっていたが、ヤラのライフ・テクスム会長は、合併後の新会社で職務に就ける人物にCFインダストリーズとの交渉にあたってほしかったと述べた。