(2014年10月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

テムズ川岸で居眠り、川に落ちた男性救助される 英ロンドン

英国では移住者や「エリート」、政治そのものに対する不満の声が高まっている(写真はロンドン)〔AFPBB News

 「静かな絶望の中で耐え忍ぶのがイングランド流だ」――。1973年にピンク・フロイドはこう歌った。ストイックな態度は当時の国民性であり、欧州の病人だった英国にはそれが必要だった。

 現在、この国の否定的な態度には、静かなところなど何一つない。今日の英国を取り巻く雑音は、移住者や詳細不明の「エリート」、政治そのものに対する唸るような不満の声だ。

 目下、選挙に関して世間を沸かせている英国独立党(UKIP)は、今の状況がひどく、一段と悪化しているという多くの人の見方を糧に伸長している。最大野党の党首であるエド・ミリバンド氏は、近代経済と対立している。明るい気質のデビッド・キャメロン首相でさえ、不機嫌な気分にふけっている。

 このような耽溺はとにかく許し難い。というのも、そうした不機嫌さは全く見当外れだからだ。

不満の声が間違っているこれだけの理由

 博識な外国人のような目で英国を見るといい。ここにあるのは、国の存在を脅かす分離派の脅威に対して、自由で公正な住民投票を実施することによって対応する国だ。英国は、大半の欧州諸国よりも企業に寛容で、米国よりも貧困層に優しい経済モデルを発展させてきた。

 公共支出を年々減らしながら、これといった社会不安も起きない。犯罪は減っている。失業率は6%だ。政治家は大した人物ではないが、基本的には尊敬に値する。首都ロンドンは現代世界の奇跡だ。

 英国は他の先進国と比べても、不気味なほど安定している。フランスでは、2017年に国民戦線(FN)の大統領が選出される可能性が少なからずある。ここ英国では、来年の総選挙で考えられる最も極端な結果は、その偏屈な気難しさが過激主義にはまだ至らないUKIPが議席をいくつか獲得することだ。

 移住者は確かにやって来る。それも理由があってのことだ。英国は、来るに値する場所なのだ。最も効果的な移民排斥政策は自国を魅力のない国にすることであり、英国は戦後の大半の時期を通じて、その実験を行ってきた。

 我々は自分たちが思っている以上に良いだけでなく、以前の自分たちより良くなっている。1973年には、英国は自らを統治することもままならず、ましてや、フランスとドイツを経済的に対等な相手と見なすことなどできなかった。