(2014年10月18/19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

中国とドイツを結ぶ渝新欧鉄道、将来性に期待高まる

今年3月、ドイツ西部デュイスブルクで、渝新欧鉄道の路線図の前に座る習近平・中国国家主席(中央)ら〔AFPBB News

 2014年3月のある日、ドイツ・ライン川のデュイスブルク河港でのことだ。銅鑼(どら)の音が3度響き渡る中、中国の習近平国家主席が1本の貨物列車の到着を出迎えた。そして習氏はドイツに対し、両国を結ぶ新しいシルクロードを一緒に整備しようと呼びかけた。

 これは、習氏のお気に入りの戦略プロジェクトへの参加要請だった。習氏は2013年の国家主席就任以降、中国と欧州をつなぐ新シルクロードのアイデアに外遊先でたびたび言及している。

 先月のスリランカ訪問では、15億ドルが投じられる港湾整備プロジェクトの起工式に出席し、「21世紀の海上シルクロード」なる構想を売り込んだ。

 習氏がこれほど熱心なのは、中国の内陸部、とりわけ中国西部と欧州との結びつきを強化したいためでもある。額面通りに受け取るなら、これは中国が国際貿易の有力プレーヤーとして台頭してきたここ20年間で最大の貿易ルート再編成に発展し得るプロジェクトだ。

ウクライナ紛争を巡るロシアとEUの緊張の余波

 しかし、デュイスブルク河港にやって来た貨物列車は、地政学リスクがグローバル化に影を落としている典型的な事例でもある。渝新欧鉄道と呼ばれるこの鉄道は、中国の重慶からデュイスブルクまで全長約1万1000キロを結ぶものだが、線路のかなりの部分がロシア領内にあり、路線の管理はドイツ鉄道とロシア鉄道の合弁会社トランス・ユーラシア・ロジスティクスが担当しているのだ。

 ウクライナの紛争のためにロシアと欧州連合(EU)との間で通商面の緊張が高まっているときだけに、この鉄道はグローバルなサプライチェーンの中でも脆弱な環の1つになっている。

 この輸送ルートの人気は、ヒューレット・パッカード(HP)をはじめとする西側のハイテク企業や、BMWやメルセデス・ベンツといったドイツの自動車メーカーの間で少しずつ高まっている。付加価値の高い製品を中国・欧州間で輸送する手段としては、従来型の海上輸送より効率が高いと見なされているためだ。

 HPでは、重慶近郊の工場で作った製品の3分の2近くを鉄道で欧州に送っているという。また今年9月には、完成車をドイツで積み込んだ列車が初めて中国に到着している。

 列車の運行会社とこれを利用する企業は、ウクライナの紛争の影響はまだ出ていないと話している。「遅れは全く生じていない」。ドイツ鉄道の貨物輸送部門、DBシェンカーはそう述べている。