(2014年10月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ユーロ防衛に89兆円、緊急支援基金を新設へ EU

ユーロ圏経済にまた暗雲が垂れ込めている〔AFPBB News

 先週の世界市場の乱高下はユーロ圏の債務危機が再発する前兆だと考えるのは間違いだ。ユーロ圏のソブリン債のスプレッドは、ギリシャを除き、大きくは変動しなかった。

 先週起きたことは、債務危機とはかなり異なるものだ。金融市場は、今後10年から20年にわたり非常に低いインフレ率が続くユーロ圏全域の経済不況の可能性に目覚めたのだ。

 インフレ期待を測るさまざまな指標の低下が物語っているのは、これだ。投資家はユーロ加盟国の支払い能力を懸念していない。2年前は状況が明らかに違っていた。

10~20年も低インフレが続く深刻な不況の可能性

 だが、現在のシナリオは以前と変わらず憂慮すべきものだ。このような経済的な窮状のうちに暮らす人たちへの影響は一目瞭然だ。高い失業率、貧困の拡大、実質および名目賃金の停滞、実質ベースで減らない債務負担、公共部門のサービス低下と公共投資の減少といったものだ。

 ショッキングな事例がドイツの軍用装備の老朽化だ。ドイツ空軍が所有している戦闘機254機のうち、150機が飛行できないのだ。

 ユーロ圏の停滞はさまざまな度合いで諸外国に影響を与える。英国は何とか同じ運命を免れることができるかもしれないが、ユーロ圏経済は英国を道連れにするほど規模が大きい。最も大きな打撃を被るのは、通貨ユーロを使用していない中東欧地域の一部諸国だ。これらの国は、内部崩壊するロシアと停滞する欧州の板挟みになっている。

 低成長が恒久的に続く環境にあって、一体どうすれば石油価格が回復し得るのか分からない。どうすればロシアが永続的に落ち込んだ石油価格に耐えられるのかは、それ以上に分からない。

 長期停滞――慢性的な投資不足が長期的に需要の弱い時期を生みかねないという概念――は、金融界の投資家にとっても不穏な意味合いを持っている。