(英エコノミスト誌 2014年10月18日号)

ブラジルの有権者は、ジルマ・ルセフ大統領を見限り、アエシオ・ネベス氏を選ぶべきだ。

ブラジル大統領選、現職ルセフ氏とネベス氏の決選投票へ

ブラジル大統領選で決選投票に臨む現職のジルマ・ルセフ大統領(右)とブラジル社会民主党(PSDB)のアエシオ・ネベス党首〔AFPBB News

 ジルマ・ルセフ氏が大統領に選ばれた2010年、ブラジルはついにその巨大な潜在能力を開花しつつあるかに見えた。

 その年、ブラジル経済は7.5%成長し、ルセフ氏の政治の師で中道左派・労働党(PT)指導者のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ前大統領が進めてきた8年にわたる急速な成長と貧困率の低下は、もはや間違いのないものとなっていた。

 だが、それから4年経った今、明るい見通しは消えてしまった。ルセフ政権の下で、経済が行き詰まり、社会の発展は減速した。新興経済大国のBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)諸国の中でも、経済制裁に見舞われているロシアを除けば、ブラジルは群を抜いて低迷している。

 2013年6月には、100万人ものブラジル国民が街頭に繰り出し、お粗末な公共サービスと政治腐敗に抗議した。

 その抗議活動以降の世論調査では、回答者の3分の2が、次期大統領にはルセフ氏以外をと望んでいた。そのため、10月5日に行われたブラジル大統領選挙の第1回投票で、ルセフ氏の敗北が予想されてもおかしくなかった。だが、その投票でルセフ氏は41.6%の票を集め、10月26日に行われる決選投票でも、僅差ながら、なお本命視されている。

 こうした事態に至った最大の理由は、ブラジル国民の大半が、まだ日々の暮らしの中で経済の冷え込みを実感していないことにある――もっとも、まもなく実感することになるだろうが。

 また、中道右派のブラジル社会民主党(PSDB)党首で、第1回投票で33.6%の票を獲得した対立候補のアエシオ・ネベス氏が貧困層の説得に苦労し、自身の訴える改革が彼らの害ではなく利になるものだと伝えきれていないのも一因だ。ブラジルは、ネベス氏が主張する改革を切実に必要としている。ブラジルがさらに4年間、漂流を続けることを避けるためには、ネベス氏がその説得を成功させることが不可欠だ。

運命に翻弄された選挙戦

 ネベス氏に課せられたその仕事を困難なものにしているのが、悲劇により傷つけられ、運命に翻弄された選挙戦だ。それはブラジルのテレビのメロドラマに劣らずドラマチックだった。

 2カ月前、3番手につけていた候補者エドゥアルド・カンポス氏が、選挙運動に向かう途中の飛行機事故で死亡。副大統領候補だったマリナ・シルバ氏がカンポス氏に代わって大統領候補となり、世論調査でトップに躍り出た。環境保護論者であるシルバ氏は、「新たな政治」のシンボルとして、反体制派の支持を集めている。