(2014年10月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 イラク中央政府の当局者や国際機関のスタッフ、エコノミストらによれば、イラクには財政危機が忍び寄っており、領内を広く破壊しているイスラム主義者の反政府勢力との戦いに支障が生じる恐れがある。

 多額の石油収入があり、準備金や未完のプロジェクトの剰余金も数十億ドルに達するにもかかわらず、観測筋によればイラクの国家財政は混乱しており、憂慮すべき状況にある。その理由は前首相のヌリ・アル・マリキ政権時代末期の遺産と石油価格の下落だという。

給与支払い、補助金、軍備増強、難民支援・・・迫り来る財政危機

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イラク北部のキルクークと中部ティクリートの間の橋に立てられたISISの旗〔AFPBB News

 イラクの歳出は急増している。中央政府はエネルギーや食料に補助金を出しており、公務員給与の総額も多額に上る。これらの項目で中央政府予算の70%を占めるという。

 また、イラクは苦戦している軍隊の増強にも資金をつぎ込まねばならない。

 イラク軍には、米国とイラク自体が兵士の訓練や装備の充実に数十億ドルの資金を投じてきたにもかかわらず、長年の汚職と管理のまずさが災いし、今年6月には「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」の進軍に屈している。

 志願してISISとの戦いに加わった数万人の人々にも食料や住居、給料を支給しなければならず、戦闘に備えた訓練も施さなければならない。さらには、戦いで住まいを追われた国内の難民175万人にも食料を提供しなければならず、それだけでも月間5億ドルもの支出が必要になっている。

 「国内の難民にも早急に目を向ける必要がある。これは軍事作戦とは別の話だ」。イラクエネルギー研究所の創設者でブルッキングス・ドーハ・センター客員研究員のルエイ・ハティーブ氏はこう指摘する。

 イラク中央政府はクルド自治政府(KRG)にも数十億ドルの借りがある。資金と権限を巡る激しい対立(これゆえに、両者の軍事協力がなかなか進んでいない)を受けて、中央政府は今年に入ってから補助金の支給を止めているからだ。