(2014年10月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

いにしえの終末の預言、イスラム国のスローガンに

トルコと国境を接するシリア北部の要衝アインアルアラブ(クルド名:コバニ)の丘にたてられたイスラム教スンニ派の過激派組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」の旗のそばに立つ同組織の戦闘員とみられる人影〔AFPBB News

 バラク・オバマ米大統領は法律家の面が強すぎて、指導者の面が弱すぎる。前米国防長官のレオン・パネッタ氏には売り込むべき回顧録があるが、実際は、同氏の大統領批判は見慣れた場所を歩んでいる。

 現職の政府高官も退任した政府高官も、これまでずっとオバマ大統領のホワイトハウスの過度な慎重さについて不満をこぼしてきた。重要か否かは別として、米国の同盟国も同じ不満を表明している。

 多くの場合、彼らの言い分には一理ある。そして、またオバマ大統領の言い分にも一理ある。

 一見したところ、カリフ制イスラム国家を自称するスンニ派過激組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」によるシリアの国境の町コバニ(アインアルアラブ)の包囲攻撃は、批判者たちに攻撃材料を与えたように見える。

 オバマ氏はほんの数週間前、散々迷った末に、米国主導の連合軍はISISを弱体化させ、最終的に壊滅させると宣言したばかりだ。ところが今、ISISはシリアとトルコの国境沿いの広範な地域を支配下に置こうとしている。

反ISIS連合、トルコの条件付き「支援」

 米国は、名目上の同盟国であるトルコから全く支援を得ていない。トルコ政府はよく言っても、コバニのクルド人の運命について相反する感情を抱いている。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、彼らとクルド労働者党(PKK)との密接なつながりを指摘する。エルドアン氏から見れば、コバニのクルド人はテロリストなのだ。

 同氏は、クルド人がスンニ派のジハード(聖戦)主義者に包囲されているのを見て満足しているように見える。

 エルドアン氏のより大きな戦略的目標は、コバニの苦境を、米軍をシリアの内戦に引き込む手段として利用することだ。反ISIS連合に対するトルコ政府の支援は、シリアのバシャル・アル・アサド政権に対する米軍配備にオバマ氏が同意することが条件になっている。

 そのためトルコは、米国がアサド氏と戦うと約束した場合にのみ、ISISと戦う。いわゆるシリアの「第3」勢力――穏健派の反政府勢力――は、西側の希望的な想像の虚構としてのみ生き続けている。

 米国はこうして、シリア内戦の双方で戦うよう求められている。中東の奇妙な基準で見ても、これは突拍子もない提案のように見える。