(2014年10月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 ロシアは西側諸国の制裁措置によって国外で差し押さえられた資産について自国のオリガルヒ(新興財閥)に損失を補償するため、ロシアの裁判所に同国内にある諸外国の資産を接収する権利を与える準備を進めている。

 欧州連合(EU)と米国の制裁に基づき大富豪のアルカジ・ローテンベルク氏が所有している高級不動産が先月イタリアで差し押さえられたことにちなみ「ローテンベルク別荘法」とのあだ名をつけられた法案は、政府予算がロシアのオリガルヒの保険証券にされているとの抗議を招いた。

資本逃避を懸念する閣僚からも批判の声

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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領〔AFPBB News

 法案は、ロシア国内にある外国の資産がロシア政府と西側諸国との対立の人質になりかねないとの懸念も煽っている。法案はアレクセイ・ウリュカエフ経済相にも批判され、同相はロシアからの資本輸出を促す恐れがあると述べた。

 ウラジーミル・プーチン大統領の与党・統一ロシアに所属するロシア下院議員は8日の一次審理で、通常は従順なロシア連邦共産党と極右の自由民主党の反対票を押し切って同法案を強制通過させた。

 同法案は、外国の裁判所によって自身の権利を侵害されたロシア国民は、差し押さえられた資産やその他の損失を埋め合わせるために、ロシアの政府予算からの補償を申請できると規定している。そのうえで、ロシアの裁判所はロシア政府に費用を弁償するために、問題になっている国の政府がロシア国内に保有する資産の差し押さえを命じられると定めている。

 一部の野党政治家は、経済停滞とインフレ高進を受けて政府が社会福祉への予算支出を削減しているため、この法案は政府に対する怒りを招きかねないと話している。公正ロシアに所属するオレグ・ニロフ議員は「思い出してほしいが、予算にそんなお金はなく、病気の子供の面倒を見るためのお金さえない」と述べた。

オリガルヒは同法を使わない?

 しかし、法律の専門家の間には、大物たちは同法を使いたがらないと見る向きもある。補償を受けるためには、問題の資産の所有権をロシアの裁判所に証明しなければならないからだ。

 多くのオリガルヒの外国資産は、外国の持ち株会社や信託を通じて保有されており、所有権をロシア政府から隠せるようになっている。「彼らは税務調査官を恐れ、強制捜査を恐れている。そもそも彼らが自分の会社を外国の管轄下に置いているのは、そのためだ」とモスクワのある外国人弁護士は言う。