米軍を中心とする有志連合は、シリア北東部のイスラム国の「首都」ラッカを中心に、主要な軍事拠点を破壊。その後、イスラム国が運営していた同国東部の石油関連施設を空爆し、彼らの油田収入には大きな打撃を与えた模様だ。

 もっとも、空爆だけでは地域の支配権を奪還することはできない。空爆と同時に地上部隊の作戦も必要になる局面だが、地上作戦を担うべき反政府軍は、兵力も武器も貧弱であり、イスラム国への有効な反撃ができていない。そもそも米軍との連携もできていないようだ。

 しかも、イスラム国はすでに主要な拠点を移動し、各地域の民間人の中に紛れ込んでいるため、空爆の目標が絞られにくい状況になっている。したがって、空爆によってイスラム国はそれなりのダメージを受けてはいるが、実際には支配地域をあまり失っていない。

 それどころか、今は逆に主力部隊を送り込んで、シリア北部のトルコ国境の町アイン・アルアラブ(クルド名「コバニ」)を猛烈に攻め立てている。イスラム国がそこを奪取すると、ラッカからトルコ国境まで、完全にイスラム国が支配する回廊が確保されることになる。

印が示す場所がアイン・アルアラブ。トルコとの国境に接している(Google Maps)

目の前の激戦に神経を尖らせるトルコ

 アイン・アルアラブでは空爆と同時に、クルド人部隊が地上で応戦して激戦となっているが、イスラム国に押され気味だ。すでにイスラム国側の迫撃砲がアイン・アルアラブ中心部を襲うまで肉薄している。イスラム国の迫撃砲は、ときおり国境を越えたトルコ領にも着弾している。