(英エコノミスト誌 2014年9月20日号)

一連の誤報が、日本の有力紙に打撃を与えている。

 一部の世界では、ジャーナリズムの教義の1つに、3つの事例があれば信頼できる記事になる、というものがある。日本の左寄りの有力紙で730万部の発行部数を誇る朝日新聞は、3度目の恥ずべき記事撤回の後、自社の評判を懸けて戦っている。

 朝日は9月14日、ゲーム会社、任天堂の社長とのインタビュー記事をでっちあげたことを認めた。8月と9月には、より重大な2つの記事を撤回している。1つは、戦時中に日本軍が「慰安婦」――売春を強要された女性――を利用していたことに関連する記事。2つ目は、2011年に福島第一原子力発電所で起きた大惨事に関するものだ。

 懸念されるのは、体制志向の大手日刊紙の中で最も主張の強い朝日新聞が今後、手加減するようになることだ。

慰安婦記事撤回の波紋

 日本の雄弁な右派は、朝日の恥を見てほくそ笑んでいる。保守派の雑誌は何カ月にもわたって、戦時中の性の奴隷のテーマについて朝日を叩いてきた。1980年代以降、朝日新聞は元帝国陸軍軍人の吉田清治氏の証言に基づく記事を十数本掲載した。吉田氏は1943~44年に韓国の農村部で、自分がいかにして陸軍の売春宿のために女性を連行したか説明した。

 吉田氏の説明はすぐに疑問視され、1997年に朝日新聞は同氏の証言を裏付けることができなかったと報じた。元朝日新聞特派員の水野孝昭氏は、当時、記者たちはそれが何を意味しているのか十分に分かっていたが、「読者には明確な説明がなかった」と言う。

 朝日新聞の上層部は、記事の作成に関わった記者がすでに退職した今頃になってようやく、真実を告白した。9月11日には経営幹部がテレビで謝罪した。編集担当幹部も解任された。その後、安倍晋三首相までが割って入り、朝日新聞は世界に向かって慰安婦に関する誤報について説明すべきだと述べた。

 安倍氏率いる自民党の右派の面々は(またしても)、慰安婦に関する日本の責任を認めた1993年の政府見解を修正するよう求めている。帝国陸軍による売春強要に関する広範な歴史的事実が変わっていないにもかかわらず、だ。

 福島第一原発での出来事に関する朝日新聞の誤報は、もっと微妙なものに見える。5月に同紙は、パニックに陥った作業員が命令に背いて、損傷した原子力発電所から逃げたと報じた。だが実際は、最近公表された第一原発の亡き所長の証言が強調していたように、作業員は単に指示について混乱しただけだった。

 任天堂のケースでは、朝日は任天堂の社長がオンライン上で語った発言の一部を、インタビューと偽って報道した。