(英エコノミスト誌 2014年9月20日号)

欧州はロシア産天然ガスの供給停止を乗り切れるが、短期的な停止にしか耐えられない。

ロシアがウクライナへのガス供給停止

ウクライナ西部ウシュゴロド近郊を走る天然ガスパイプライン〔AFPBB News

 ナポレオンもヒトラーも、欧州での領土拡大を目指し、ロシアの厳しい冬に屈することになった。

 そして今、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、自分に有利になるよう欧州の国境を動かす戦略の一環として、ロシアの寒さをいくらか輸出しているように見える。

 最近、ロシアの国営企業ガスプロムがポーランド、オーストリア、スロバキアに供給する天然ガスが、きちんと説明されないまま削減された。恐らくは、これらの国がロシア産ガスをウクライナに再輸出しないようにするための措置だろう。

 ロシアは、欧州諸国が住宅の暖房や発電、産業向けの動力供給を賄ううえで依存しているガスの3分の1を供給している。

 今のところ、西欧諸国の政府やガスの法人需要家は、たとえロシアとの関係が一段と悪化したとしても、ガス供給が完全かつ長期的に停止されるリスクはほとんどないと考えている。ロシア政府がガス輸出から得られる収入に大きく依存しているというのが、その理由だ。

 だが、冬が訪れる今後数カ月間で短期的な供給中断が起きることは、それほど考えられない事態ではない。

欧州のガス備蓄は潤沢だが・・・

 幸い、欧州の大半の国は何とか切り抜けられるだろう。昨冬は寒さがさほど厳しくなく、今夏に備蓄を多少積み増したため、欧州諸国のガス貯蔵施設は現在、ほぼ90%満たされている。

 欧州は昨年、155bcm(1bcm=10億立方メートル)のロシア産ガスを輸入した。現在の在庫水準は75bcmだ。このため、欧州のエネルギー流通業者が代わりの調達先を探すのに数カ月の猶予期間がある。

 主要ガス生産国のノルウェーは、生産量を多少増やせるかもしれない。また、中国の景気減速と日本の一部の原発再稼働は、値段が高いとはいえ、スポット市場に出回る液化天然ガス(LNG)が増えることを意味している。

 欧州は年間200bcm以上のLNGを輸入する能力を持ち、現在は、そのうち20%しか利用されていない。欧州連合(EU)が作成している非常事態対処計画には、家庭の暖房と発電向けのガス供給を確保しておくために、産業向けのガス供給を削減する計画も含まれていると言われる。