「人の心を動かすリーダーシップ」って、あったらいいですよね?

 でも、それって、どんなものなのでしょうか?

 田村次朗さんのオーガナイズで鈴木寛さんと2人で登壇した慶應義塾大学の「福澤文明塾」で、鈴木寛さんが挙げた例は鮮やかなものでした。

論破しても、誰も愛さない

 鈴木寛さんは大学生中心のある「弁論大会」で審査員をしているそうです。そこで、自信満々の東大生や早大生などが1次予選や2次予選で敗退していくという。

 審査の結果にちっとも納得しない応募者に、審査員として鈴木寛さんはこんなふうに言うそうです。

 「君たちは弁論をディベートと間違えていないか? ディベートの大会なら、相手と議論して論破すれば勝ちになる。でも弁論大会はディベートではない。相手をどれだけ論破しても、聴き手が心を動かされない、感動しないスピーチは、しょせん予選落ちなんだよ」

 この指摘、日本の教育で大きく抜け落ちている部分を射貫いているように思います。

 例えば米国の法律家(「弁護士」でもいいのですが、彼らは同時に判検事にもなり、法曹の人事流動性が高いので)は軒並み「演説」の名手、スピーチがたいへんに上手です。バラク・オバマは大統領になってからもしばしば自分のスピーチライティングをゼロからするらしく聞き及びます。

 ここでの「スピーチライティング」のコツは、落語と似た面があると思います。つまり「おや?」と思わせておいて「なるほど!」と腑に落ちさせたり、人の心にジンとくるエッセンスを盛ってあったり・・・ほとんど文学的な創作、詩や小説のプロットを考えるようなものです。

 「ここでこれを話して、そのあとこれを喋れば、お客は笑い、そのあと深く納得してくれる」というような内容を、あるいは事前に設計し、あるいは反射的に当意即妙、アドリブも交え、空気を読みながら繰り出していく。

 で、ポイントは「聴き手から愛される」ことなんですね。「愛する」まで行かなくても、少なくとも聴き手から好意を持って耳を傾けられること。