(英エコノミスト誌 2014年9月13日号)

停戦は辛くも守られているが、ウクライナ東部での緊張はまだウクライナ、ロシア両政府を悩ますだろう。

EU、ロシアへの追加制裁を決定 発動を遅らせる可能性も

今のところ、停戦は概ね守られている(写真はウクライナ東部ドネツクの北5キロのアブデーフカを装甲兵員輸送車でパトロールするウクライナ兵)〔AFPBB News

 ウクライナ東部での戦争は、今のところ収まっている。東部の多種多様な各陣営には、銃を片付けることと同じくらい、戦い続ける理由がある。だが、9月5日にミンスクで調印された停戦協定は、これまでのところほぼ守られている。

 ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は、ロシアに対する勝ち目のない戦争を行うことは望んでいない。それは、ポロシェンコ大統領が東部でウクライナ政府の「対テロ作戦」を続行していた場合に陥っていただろう状況だ。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ドネツクとルガンスクが、ウクライナ政府に対抗する手段として機能し得る分離派の領地に変わったのを見て喜んでいる。

短期的にはロシアの勝利か

 ロシア政府は最初から恒久的な停戦を主張してきたが、それは、人道主義的な動機からではなく、ウクライナ東部に凍結した紛争地域を作るという考えをロシア政府が気に入っているからだ。

 キエフの政治的ムードは、ウクライナ軍に勢いがある限りは戦争を続けるようポロシェンコ氏を促した。だが、重火器を持ったロシア軍の8月下旬の侵攻は、プーチン氏には、ウクライナ政府に軍事的勝利を与えるつもりがないことを示した。北大西洋条約機構(NATO)の直接的支援がない中で、ポロシェンコ氏は取引せざるを得ないと感じた。

 これは、短期的にはロシア政府の勝利であるように見えるだろう。ロシアは、モルドバやグルジアと同様に、ウクライナの政治に影響を与える仕組みを持っている。というのも、ドネツクとルガンスクの地位が未確定である限り、ウクライナはとてもNATOに加盟できないからだ。

 プーチン氏は、ロシアの正規兵投入は非難を浴びたが、諸外国による行動はほとんどなかったことに気づいたはずだ。バラク・オバマ米大統領は、ロシア側の動きを侵略と呼ぶのを控え、むしろ「これまで数カ月間起きてきたことの続きだ」と述べた。

 欧州連合(EU)は9月半ばに新たな制裁を適用するが、恐らくはロシアを孤立させる気がないことを示すために、追加制裁を「撤回可能」な措置と表現した。ロシアのガスプロムは先日、ウクライナへの再供給を止めるためにポーランドへのガス供給を削減した。

 ウクライナ東部での戦争は、多くのロシア人にとって遠く離れた出来事のように感じられてきた。国営テレビは、西側の策略や陰謀について盛んに取り上げる一方で、視聴者が抱く不全感や帝政のノスタルジアを癒やすために戦争の話を巧みに操作してきた。

 レバダ・センターの世論調査では、調査対象者の77%が、ウクライナ東部での同国政府の軍事行動の首謀者は米国であると話していることが分かった。