(2014年9月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 大ヒットゲーム「マインクラフト」の開発者が今年6月、自分の会社を引き取ってくれる人はいないだろうかとツイッターでつぶやいた時には、そのわずか3カ月後にマイクロソフトがその権利を25億ドルで買いに来るなどとは、とても予想できなかっただろう。

 「正しいことをしようとして人の恨みを買うのは好きじゃない」。マインクラフトの開発元であるモージャンを5年前に立ち上げたスウェーデンのゲーム開発者で、むしろ「ノッチ」という愛称の方で知られているマルクス・ペルソン氏は、ツイッターでそう発言していた。

買う側と買われる側の課題

マイクロソフト、「マインクラフト」開発企業を25億ドルで買収

米マイアミのゲームソフト販売店で売られるXBox 360版「マインクラフト(Minecraft)」(〔AFPBB News

 モージャンはこの5年間で1億人のユーザーを獲得して5億ドル近い売上高を得るに至っており、昔ながらのやり方に従うのを好まないペルソン氏は、そういう企業を経営する責任に四苦八苦していた。

 今回の取引により、ペルソン氏と2人の共同所有者(ヤーコプ・ポルセル氏と最高経営責任者=CEO=のカール・マンネ氏)は大金を受け取ってモージャンを去り、同社とこのゲームに入れ込んでいるユーザーたちの命運はマイクロソフトの手に委ねられることになる。

 「私は象徴になんかなりたくない。自分では理解できず、取り組みたくもないのにずっとつきまとってくる巨大なものの責任など負いたくない」。ペルソン氏は買収成立後に投稿したブログの中でこう語った。「私はCEOじゃない。ツイッターで意見を言うのが好きなオタクプログラマーだ」

 一方、マイクロソフトには正反対の課題が突きつけられている。マインクラフトはゾンビと戦ったり都市を造ったりするゲームで、遊び方もゴールも特に決まっていない自由な空間だ。そのような空間から「大企業」の文化を持つマイクロソフトが、このゲームの魅力を生み出している遊び心を損なうことなく価値を引き出すにはどうすればよいのか、という難題があるのだ。

 最近は、アップルやグーグルといった格好いいライバル会社の新製品投入が近づくと消費者が騒ぎ出す。ところが、マイクロソフトではそういうことがなかなかない。

 マインクラフトの買収は、マイクロソフトのブランドを強化する好機になる。ゲーム機の「Xbox(エックスボックス)」だけでなく(このゲーム機にはぴったりのゲームかもしれない)、パソコンやスマートフォンなど他のプラットフォームでも同様な効果が期待できるだろう。