(英エコノミスト誌 2014年9月13日号)

米国の計画は悪くはないが、成果を上げるまでには不安になるほど長い時間がかかるだろう。

シリアで対イスラム国空爆の用意、米大統領が表明

9月10日、ホワイトハウスで国民向け演説を行うバラク・オバマ米大統領〔AFPBB News

 バラク・オバマ大統領が9月10日に米国民向けに演説を行った際、その言葉はイスラム国(IS)のみに関わるものではなかった。

 アルカイダ以来最も深刻なテロリストの脅威、ISという「がん」に対抗する大統領の戦略は、自らを飲み込んだ混沌の克服に中東自身が取りかかることができなければ機能しない。

 同様に米国も、、外交政策を縮小したこれまでの年月の間に失った地位を多少なりとも回復できなければ、持続的な対IS連合のリーダーとして振る舞うことはできない。

 それゆえ、オバマ大統領が言うところの「米国の最高のリーダーシップ」は、テロとの戦いであると同時に、米国の力に疑問を抱く人々に対する反撃でもある。

 オバマ大統領の戦略は、ISを軍事的、財政的、思想的に「弱体化させ、最終的には撲滅する」ために、西欧とアラブ諸国からなる連合の結成を呼びかけるものだ。たとえ国連の承認がなかったとしても、この連合はアラブおよびイスラム教徒の支援を根拠として、正当性を得るというわけだ。

 米国はイラク、さらに必要な場合はシリア領内においても、ISを空爆攻撃する。米国はクルド人を支援するほか、シーア派偏重により弱体化し、ISに敗北して壊滅状態にあるイラク軍を立て直す。さらに米国は、シリアで穏健派の反体制勢力を結集させる。海兵隊は派遣されないが、米国人の教官と特殊部隊が大きな役割を担うはずだ。

 オバマ大統領が積極策に出たのは正しいし、こうして計画もできた。しかし、米国人は覚悟を決めるべきだ。仮に成功するとしても、その前に長い苦闘の日々が待ち構えていることは確実だからだ。

ISは過去の存在になるか?

 これまで、オバマ大統領はイラクが「主権を回復し、安定し、自立した」という誤った判断を下してISの脅威を軽視し、バシャル・アサド政権に対する一般市民の反乱が起きた後も、シリア情勢の悪化を放置してきた。

 こうした姿勢も原因となって、ISが中東を混乱に陥れている。ISはシリアのかなりの部分を占領し、不満を抱えるスンニ派に訴えかけて隣国のイラクを破壊しようとしている。野放しにすれば、ヨルダン、レバノン、さらにはイスラム教で最も重要な聖地(と広大な油田)が存在するサウジアラビアにまで進出するかもしれない。

 ISは既に、その進路に迷い込んだあらゆる欧米人にとって脅威になっているうえ、欧米出身の聖戦(ジハード)戦士が、生まれ育った欧米諸国に戻って攻撃を仕掛けてもおかしくない。