(英エコノミスト誌 2014年9月13日号)

連合体制の放棄は、スコットランドにとっては過ちであり、残された国にとっては悲劇となるだろう。

英国旗でいっぱいの目抜き通り、ロイヤルウエディングで

イングランドやスコットランドの旗を重ね合わせたデザインの英国国旗〔AFPBB News

 学校に通う子供たちはかつて、郵便物の詳細な宛先を書くことで、複雑なネットワークと帰属意識が絡み合う、この世界における自分の居場所を頭に描いたものだった。

 英国の子供なら、まず通りと町の名前(ロンドン、マンチェスター、エジンバラ、カーディフなど)に始まり、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドのいずれかが続き、そのあとに連合王国(UK、英国)という記載が来る(さらにそのあとは欧州、世界、宇宙・・・と続く)。

 子供たちは、英国、さらには産業革命、大英帝国、ナチスに対する勝利、福祉国家など、この国が味わってきた数々の苦難と偉業のすべてが、スコットランドのハイランド地方やイングランドのクリケットと同様に、自分たちの歴史的遺産であることを理解していた。

 同じ軸から同心円状に広がるこうしたアイデンティティーは、互いに対立するものではなく、補い合うものだということを、子供たちは本能的に知っていた。

 少なくとも、かつてはそうだった。スコットランド独立の是非を問う住民投票が実施される9月18日以後は、そうした層状構造のうちの1つ、すなわち英国の部分が消滅するかもしれない。少なくとも、3世紀前の連合法成立から認識されてきた形では存在しなくなる。

 投票日が近づくにつれ、世論調査ではスコットランドの民族主義勢力が独立に反対する連合維持派に追い付き、さらにはわずかながらリードを奪っている。

 スコットランドの兵士や政治家、思想家やビジネスマンがその建国や繁栄に貢献したにもかかわらず、英国はスコットランドの民族性を守り育てず、逆に押しつぶしていると考えるスコットランド人がますます増えている。市民全体のわずか7%しか参加しない投票により、この偉大なる多民族国家が、一夜にして崩れ去ってしまうかもしれないのだ。

 かつては想像もできなかったその結末は、スコットランドにとっては散々な結果、あとに残された英国にとっては悲劇となるだろう。

分裂がもたらすダメージ

 独立後に残された英国の存在感は、あらゆる国際的な議論の場で小さくなるだろう。自国民に背を向けられた国の言うことに、誰が耳を傾けるだろうか? 

 英国が自由貿易と国際秩序の維持を概ね支持していることを考えれば、これは世界にとっても災難と言えるだろう。核保有国としての英国の地位も危うくなる。核ミサイルを搭載する英国の原子力潜水艦は、スコットランドの入江に設けられた海軍基地に配備されていて、すぐに動かすことはできない。