(2014年9月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 アルゼンチン国債のデフォルトを受け、同国上院が最近インフレを抑制するための「物価固定法」を可決した際、政府は、アルゼンチンをベネズエラに変えてしまうのかという政府批判を展開した人々を攻撃した。だが、実際のところ、むしろベネズエラがアルゼンチンと化しつつあるように見える。

 先週、ベネズエラ屈指の著名エコノミストが、ベネズエラ政府は外国債をデフォルトすべきだと提案した。残高が1000億ドル以上に上るハードカレンシー(国際決済通貨)建てのベネズエラ国債が新興国指標の大きな割合を占めることを考えると、これは市場にとって一大事だ。

 しかし、ベネズエラの外債デフォルト説の注目度をさらに高めているのは、それを唱えているエコノミストが、カラカスのうるさい左翼主義者ではなかったことだ。発言の主は、ハーバード大学国際開発センターの所長で、米州開発銀行(IDB)の元チーフエコノミストのリカルド・ハウスマン氏なのだ。

「政府は既にベネズエラ国民に対してデフォルトしている」

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ウゴ・チャベス前大統領の死去を受け、大統領に就任したニコラス・マドゥロ氏〔AFPBB News

 ベネズエラ人で、ベネズエラの野党に助言することもあるハウスマン氏は、ニコラス・マドゥロ大統領率いる社会主義政権が既に国民に対してデフォルトしていると言う。

 ハウスマン氏の言うデフォルトには、深刻な生活必需品不足を招いた輸入業者に対する支払い遅延が含まれている。また、60%に上るインフレ率は、中央銀行が「物価の安定を維持する義務を履行していない」ことを示しているという。

 しかし、ベネズエラ国内のデフォルトをよそに、政府は外国で債券の元利金支払いを期日通りに行ってきた。ハウスマン氏とミゲル・アンヘル・サントス氏は、国際問題について論考を配信しているプロジェクト・シンジケートのコラムで、これは「ベネズエラのモラルの公正さを示す兆候ではない。モラル破綻の兆候だ」と書いている。

 確かに馬鹿げているように思われる。何しろ、「人民」を第一に考える社会主義政権が、普段は何かと馬鹿にしているウォール街の資本主義者に対する支払いを優先させているのだ。

 だが、ハウスマン氏の意見も逆説的だ。対国内総生産(GDP)の債務比率など、ほとんどの指標から見て債務を抱えられる国に対し、エコノミストがデフォルトを勧めるのは珍しいことだ。