先週の中国株式市場
―非製造業PMIの改善を受けて香港株反発、今週発表の経済指標に注目―


<先週の概況>

先週の中国株式市場は反発しました。ハンセン指数は前週比2.01%上昇で、心理的な節目の2万5,000を回復しました。上海総合指数も大幅に上昇し、週間ベースで約5%高の2,326.43ポイントで引けました。

先週発表された中国政府による8月の製造業PMIは予想に届かなかったものの、非製造業PMIが前月より改善したことが相場の買い材料になりました。また、今週発表されるいくつかの重要な経済指標の発表が注目されています。


中国株式市場バリュエーション




業種別リターン



香港ハンセン指数採用銘柄 週間騰落率ランキング



<上昇>

香港ハンセン指数構成銘柄のうち、42銘柄は上昇、8銘柄は下落しました。恒基兆業地産(ヘンダーソン・ランド・デベロップメント)や華潤置地(チャイナ・リソーシズ・ランド)などの不動産関連株が大きく買われ、それぞれ5%超上昇しました。また、中国人寿保険 (チャイナライフインシュアランス)や中国平安保険(集団)(ピンアン・インシュランス)なども堅調に推移しました。

<下落>

一方、金沙中国(サンズチャイナ)、銀河娯楽(ギャラクシー・エンターテインメント・グループ)等のカジノ関連株が下落し、この2銘柄でハンセン指数を約30ポイント押し下げました。また、匯豐控股(HSBCホールディングス)や中国海洋石油 (CNOOC)なども売られました。

先週発表された主な経済指標

日本時間9月1日10時ごろ発表された8月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月比0.6ポイント下落の51.1と、市場予想の51.2を小幅に下回りました。政府発表の中国製造業PMIは5か月連続の上昇が一服し、中国製造業の景気状況はまだ楽観視できそうにはありません。ただ、好不況の分かれ目である50を上回ったことは景気回復のトレンドがまだ変わっていないことを示しています。

規模別のPMIを見ると、各規模の企業PMI指数はまちまちでした。大企業の製造業PMIは前月より0.7ポイント下落の51.9となりました。中企業の指数も前月と比べて0.2ポイント下落し、49.9となりました。また、小企業のPMI指数が49.1と、再び50を下回りました。この結果を見ると、中小企業の回復の勢いは依然弱く、政府による中小企業向けの刺激策が一段と追加される可能性もありそうです。

指数の内訳を見ると、8月の各構成指数は前月と比べて軒並み下落しました。新規受注(53.6→52.5)及び生産(54.2→53.2)の増勢が緩やかになったほか、在庫(49→48.6)と雇用(48.3→48.2)が若干悪化しました。


今後発表される主な経済指標

9月8日 中国貿易収支 8月 +498.4億ドル 市場予想 +400 億ドル、前回 +473億ドル
     輸出(前年比) 8月 +9.4% 市場予想 +9.0%、前回 +14.5%
     輸入(前年比) 8月 -2.4% 市場予想 +3.0%、前回 -1.6%

8日に発表された8月の中国の輸出は前月比9.4%の上昇と、市場予想を小幅に上回りました。また、8月の輸入は前月比-2.4%と7月の-1.6%から減少率が拡大しました。よって貿易収支は市場予想を大幅に超える498.4億ドルの黒字となり、過去最高値を更新しました。

輸出については、グラフ「中国輸出金額の推移 地域別 (2010年〜)」を見ると、8月の各地域向けの輸出の伸び率はまちまちでした。2010年年初を100とすれば、特にアジア向け(7月の199.8→8月の209.5)及びアメリカ向け(7月の154.8→8月の156.9)の輸出の伸びが目立ちました。一方で、欧州向け(7月の126.5→8月の122.9)と日本向け(7月の134.7→8月の124.7)の輸出の伸び率は減少に転じたことも明らかになりました。

輸入では、輸入数量が増加し、輸入価格が低下する傾向が続いてきました。税関のデータを見ると、前8か月の鉄鉱石の輸入数量は16.9%増加した一方、平均価格は16%低下しました。また、銅の輸入数量は14.3%増加しましたが、平均価格は7.1%下落しました。




9月11日 生産者物価(PPI、前年比) 8月 市場予想 -1.1%、前回 -0.9%

PPIの先行指標である中国製造業PMIの輸入価格指数をみると、前月の49.3から48.5まで低下し、4か月ぶりに下落に転じました。それを受けて、PPIの悪化が避けられないようです。8月のPPI は-1.1%にマイナス幅を拡大すると見込まれます。

9月11日 消費者物価指数(CPI、前年比) 8月 市場予想 +2.2%、前回 +2.3%

去年6月のCPIベースが比較的高いことに加え、商務部が8月中旬に発表した卵や野菜などの食料品の軟調な上昇を受けて、8月のCPIの上昇の勢いがある程度弱まり、前年と比べると伸び率が+2.2%の増加と予想しています。



9月10日〜15日 マネーサプライM2(前年比) 8月 市場予想 +13.5%、前回 +13.5%

8月の貿易収支は史上最高値である498.3億ドルの黒字となったほか、中国人民銀行(PBOC)の政策スタンスが変わらなかったことから、8月のマネーサプライM2(前年比)は前年比+13.5%と、前月から横ばいと予想されています。


9月13日 固定資産投資(前年比) 8月 市場予想 +16.9%、前回 +17.0%

固定資産投資額は、農村部を除いた都市部の建築工事や設備工事費を集計したものです。7月の新規人民元建て融資が予想以外に軟調だったことから、8月の固定資産投資額も減速する可能性が高いと思われます。特に不動産関連の固定資産投資額の減少の傾向が継続する限り、製造業、建設業などの固定資産投資が堅調に推移しても全体の固定資産投資額は伸び悩むでしょう。8月の固定資産投資額の伸びは16.9%増と見込まれています。

9月13日 小売売上高(前年比) 8月 市場予想 +12.1%、前回 +12.1%

8月の中国製造業PMIの雇用指数は48.3から48.2に減少したほか、中国国内の汚職調査の影響が暫く続きそうです。8月の小売売上高(前年比)の市場予想は12.1%増と見込まれています。

9月13日 鉱工業生産(前年比) 8月 市場予想 +8.8%、前回 +8.8%

8月中国製造業PMIは51.7から51.1に小幅に下落し、内訳の生産指数は前月の54.2から53.2に低下しました。これらの先行指標を参照すると、8月の鉱工業生産は8.8%増が予想されています。



マーケットビュー

先週の香港ハンセン指数は2.01%上昇し、先々週に割り込んだ心理的な節目の2万5,000ポイントを回復しました。特に水曜日に発表された中国非製造業PMIが前月と比べて上昇したことが相場の買い材料になりました。また、資金面では、中国人民銀行(中央銀行)が実施した定例の公開市場操作(オペ)の結果が実質4週連続で資金供給超となったことに加え、外部資金が流入しつつあるようです。さらに、米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)6」の発売観測を手掛かりに、ハンセン指数で時価総額が最大の中国通信キャリアである中国移動が大きく買われ、週間でハンセン指数を70ポイント超の押し上げに寄与しました。

ウクライナと中東の情勢の緊張緩和に加え、先週末に発表された米国の雇用統計の伸びが予想以上に悪かったことを受け、金融当局は利上げを急がないとの見方が強まり、米国株が最初の下落から反発となりました。また、欧州中央銀行(ECB)が予想外の利下げや資産担保証券(ABS)買い入れなど、追加の金融緩和の決定したことを背景に、主要な欧州の株式指数が堅調な推移となりました。外部環境の好転を受けて、今週の香港株が上昇のスタートとなりそうです。

ただ、先週の香港ハンセン指数は500ポイント近く上昇したことや、中秋節による休場や週後半に重要な経済指標の発表を控えていることから、今週は週前半に積極的な買いが出にくく、利益確定売りに押される可能性がありそうです。テクニカル面では、ボリンジャーバンドのチャートを見ると、ハンセン指数は上のバンド(+2σ)に近づいてきたので、買われすぎの兆しにも留意が必要です。

スケジュールについては、中秋節のため、8日(月曜日)に上海市場・深セン市場が休場、9日(火曜日)に香港株式市場が休場となります。また、8日(月曜日)に中国本土系香港企業株指数であるハンセンレッドチップ指数の構成銘柄の一部が入れ替わりますので、新たな採用銘柄が物色される可能性が高く、注目です。さらに、週末に発表される物価指数、固定資産投資、鉱工業生産等の重要な経済指標にも注目が集まりそうです。

フィナンシャル・インテリジェンス部 林 宇川(Tony Lin)

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