(英エコノミスト誌 2014年9月6日号)

イスラム教徒はなぜ欧州より米国でうまくやっているのか。

「教会がモデル」の巨大モスク、米国各地に出現

欧州と比べると、米国のイスラム教徒は社会に溶け込んでいる(写真は米バージニア州フォールズ・チャーチのモスクでの礼拝の様子)〔AFPBB News

 米国務省の推定では、最大100人の米国人ジハード主義者(イスラム聖戦士)がイラクとシリアで戦っているという。2人目の米国人ジャーナリストが「イスラム国(IS)」によって首をはねられたことを示していると見られるビデオが出回っている。

 読者は、米国最大のイスラム組織が年次会合を開くには、今は難しい時期だと思うかもしれない。

 だが、レーバーデー(労働者の日、今年は9月1日)の週末にデトロイトで開かれた北米イスラム協会(ISNA)の会合は、欧州ではなかなかくつろいだ気分になれない宗教的少数派を米国がいかにうまく同化させているかを思い出させた。

 会議場は、異なる伝統との一体感を表す衣装をまとった異なる人種のイスラム教徒でいっぱいだった。イスラム教ボーイスカウトやカリフォリニア州のイスラム教教養大学が展示施設を設けていた。参加者は、米国の複雑な建築基準に抵触することなく、どのようにモスクを建てるかについて議論したり、フードコートで名刺を交換したりしていた。

 呼び物は、南部バプテスト教会員のジミー・カーター氏だった(現在、孫も話題になっている)。イスラエルに対する唯一のあからさまな敵意を示したのは、ガザの人々との連帯を表明するためにブルックリンからやって来た、毛皮の帽子シュトライメルをかぶった2人のハシディーム派のユダヤ人だった。

民族と宗派の「るつぼ」が生む寛容性

 米国のイスラム教徒は、欧州のイスラム教徒とは、その数も出身地も異なっている。国勢調査は信仰については尋ねないが、米国のイスラム教徒の数は人口の約1%と推定されており、英国の4.5%、ドイツの5%より少ない。

 さらに米国人イスラム教徒は、1つの宗派や民族が圧倒的な多数派を占めることもない。ピュー・リサーチ・センターが前回2011年に集計を試みた時は、米国のイスラム教徒が世界77カ国からやって来ていることが判明した。対照的に西欧諸国の多くでは、1つか2つのグループが多数派を占めている。フランスではアルジェリア人、オランダではモロッコ人とトルコ人といった具合だ。

 このことは重要な意味を持っている。というのも、米国では様々なグループがごちゃまぜ状態になっているため、イスラム教徒の移民とその子孫がグループごとに別々に暮らすことが難しくなっているからだ。

 異なる伝統が一緒に混ざり合っている。イスラム建築を多数手掛ける建築家でケンタッキー生まれのクリス・マッコイ氏は、モスクを建てる時、「問題は大抵、インド様式のドームにすべきかサウジ様式のドームにすべきかではなく、ドームを建てる余裕があるかどうかだ」と話す。