(英エコノミスト誌 2014年8月30日号)

ロシアがウクライナ東部に侵入している証拠がかつてないほど明確になっている。

ウクライナで拘束のロシア兵10人、兵士交換で帰還

ウクライナの通信社UNIANが公開した、同国東部で拘束され、首都キエフでの記者会見に引き出されたロシア空挺兵らの写真〔AFPBB News

 ウクライナ東部へのロシアの侵入がいよいよ露骨になり、ウクライナでの戦争が激しさを増している。

 8月27日には、列をなしたロシアの部隊と機材がウクライナ南端のノボアゾフスクでロシアとウクライナの国境を越えた。親ロシア派勢力が支配する地域の外側のクリミアに近い地域で新たな戦線を切り開く試みと見られる。

 ウクライナ保安庁は、ウクライナ東部で捕えられたロシア兵10人の動画を公開した。ロシアでは、プスコフの第76空挺師団の兵士のための謎の葬儀に関する報道が浮上している。本誌(英エコノミスト)が印刷に回された時点で、北大西洋条約機構(NATO)は、1000人にも及ぶロシア兵が現在ウクライナ東部にいることを示す証拠写真を公開していた。

 ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は、「ロシア軍の侵略が起きている」と露骨に宣言した。

 これらはすべて、ミンスクでの首脳会議の合間にポロシェンコ大統領が6月以来初めてウラジーミル・プーチン大統領と会った後に起きたことだ。会談は冷ややかに始まり、ほとんど成果がなかった。ロシアの関心――ウクライナをNATOに加盟させないこと――は、変わっていない。多くのロシア人が、兵士が「偶然」国境を越えたという主張を受け入れる用意があるとしても、世界の他の国々はそうではない。

 だが、プーチン氏はいまだに戦闘は「国内問題」だと主張しており、ウクライナ東部地域の代表者を交渉に加えるよう要求している。クレムリンは親ロシア派勢力が敗北することがないように彼らを下支えするだろうが、全面的に侵略する気はない。「軍事行動は、交渉に先駆けて彼らの政治的立場を強めるための道具だ」と、専門誌「世界政治の中のロシア」のフョードル・ルキヤノフ編集長は言う。

ガス戦争の前触れか

 ミンスクでは、プーチン氏はクリミア併合に伴ったような国家主義的な表明は一切行わなかった。その代わり、経済問題をくどくど繰り返した。もしかしたら、これはガス戦争の前兆なのかもしれない。気温が下がってきているため、プーチン氏は時間が味方してくれると考えている。

 ウクライナは冬を乗り切るために50億立方メートルのガスを必要としており、「ロシアは確実にそれを利用して情勢に影響を与えるだろう」と、キエフにあるSPアドバイザーズの調査部門責任者ヴィタリー・ヴァフリシチュク氏は言う。対立が冬まで長引けば、ロシアに影響力が移る可能性がある。