(英エコノミスト誌 2014年8月30日号)

西側諸国の人間はなぜ、そして、どのようにシリアやイラクへ戦いに行くのか。

過激派組織「イスラム国」戦闘員、シリアに推計5万人

イラクやシリアに向かい「イスラム国(IS)」に合流する西側の若者が増えている(写真はシリア北部ラッカの通りを行進するISの戦闘員たち)〔AFPBB News

 トルコ南東部の都市アンタキヤからシリア国境近くのレイハンルへと向かうバスに乗っていた2人の若い男は、これ見よがしに長い髭を生やし、膝下までのズボンをはいて、最小限の所持品を詰めた口紐付きの小さな袋を持っていた。

 バスの運転手には片言のアラビア語で話しかけるが(このあたりのトルコ人は大抵、多少はアラビア語を話せる)、2人の間ではイギリス英語の方言で話した。彼らは、戦闘に加わるためにシリアへと向かった欧州出身の何百人かのイスラム教徒の中の2人だった。それは2年前のことだ。

 それ以降、数千人もの人が戦闘に加わったものと思われる。入隊者の増加ペースは上昇しているかもしれない。彼らはシリアに着いたら何をするのか? そして、帰国したら何をするのだろうか?

退廃的な生活を捨て、殉教者として「五つ星聖戦」へ

 外部からの戦闘員の流入が増加した効果は、シリアとイラクで活動し、外国人戦闘員の大半を集めている残忍な過激派組織「イスラム国(IS)」が、ヨルダンと同じくらいの大きさの土地を領土と宣言し、約600万人というヨルダンとほぼ同じ人口を擁していることを見れば明らかだ。

 また、こうした流入の結果、誇らしげな戦闘員が、外国の同胞を呼び込もうと、インターネットによく練られた動画を投稿し、西側の退廃的生活を捨てて「殉教者」になろうとする者に楽園を約束している。ツイッターには、戦闘員に支給されるエナジードリンクの「レッドブル」のような贅沢品の写真を掲載した後に、切断した敵の首を持った「自撮り」写真を載せる。

 そして、西側諸国に脅しをかける際にも、顔文字――例えば、記号を使って表現した笑顔――や「LOL」(大笑い)のようなネットスラングを使う。

 ISは、シリア東部の町ラッカの支配を強めた。昨年3月にこの町を占拠したほかの反政府勢力から奪い取ったのだ。ラッカは、シリアとイラクの聖戦(ジハード)戦士の拠点となった。アフガニスタンやスウェーデンなど遠くからやって来た戦闘員が妻や子をラッカに呼び寄せ、逃げ出した住民の家に住んでいる。

 ある欧州出身の戦闘員はシリアの北部で、母国が恋しくなる物は何かと尋ねられた時、こう答えた。「牛乳さ。ここでは直接牛から絞らなくてはいけないからね」。確かにスーパマーケットのテスコで買うよりも手間がかかる。

 しかし、ジャンクフードはたっぷり支給されると、スウェーデン出身の戦闘員はうれしそうにツイッターに書いている。それに、時には何日も続けて、「落ち着いた」時間をたっぷり取れると、その戦闘員はスマートフォン向けのインスタントメッセンジャー「Kik」で知らせてきた。そういう時に、彼は「日常生活」を送る。「洗濯をしたり、家を掃除したり、訓練をしたり、買い物をしたり」するのだ。