アベノミクスの好影響とリーマンショック後のIT支出の回復が重なって、IT業界、特にソリューション業界は久方ぶりに活況を呈している。厳しく見れば単価低減は続いており、採算性の悪化等はある。しかし、大手金融機関や輸出系製造業が情報化投資を牽引する形で業界は回復しており、SE不足の声も聞こえてくる。

 このような状況下で、ITサービス系企業は中期計画の策定やビジョンの検討を再び本格化している。テーマとしては、国際化、サービス化(クラウド化)に続いて、何度目かの中小企業(SME)開拓が浮上しつつある。今後、おそらく4回目にあたる中小企業開拓をめぐる各社の取り組みが本格化してくることが予想される。

 中小企業のIT開拓は、1990年代中盤、2002~2004年、2010年など、過去、何度となく取り組まれてきた。だが一部の例外を除いて十分な成果を実現するには至らず、尻すぼみに終わっている。ITサービス系企業はこれまでの取り組みを振り返って、今回の中小企業ブームに備える必要がある。

なぜ中小企業の開拓は尻すぼみに終わっていたのか

 中小企業を開拓しようとする動きが出てくるのは、言うまでもなく中小企業の情報化が遅れているからである。基本業務から企業間取引、さらには社内SNSなど、大手企業ではシステム化に手つかずの領域はまず見当たらない。したがって開拓余地の残る中小企業に目が行くのは当然の話と言える。

 市場規模に着目しても、会計や人事といったERP等の基本業務に着目すると、潜在的な中小企業向け市場規模と既存の大手市場規模は、ほぼ同じ規模と推測されている。