(英エコノミスト誌 2014年8月23日号)

オランダの農家は、人も羨むような生産性にサステナビリティー(持続可能性)まで加えている。

 オランダ南部のリンブルフ州にあるヘーベ・ローサ農場の入り口には、無人の機械が前を横切ることがあると忠告する標識がある。この農場はロボットによって運営されている。ロボットは180頭の牛に餌をやり、牛の健康状態を監視し、牛舎を掃除し、牛の好きな時にいつでも搾乳を行う。農場を経営するフォンス・カーステン氏は、電話に気をつけていればいい。牛に人間の世話が必要な時は、アプリが知らせてくれるのだ。

 農場を相続した後、カーステン氏は2008年に一連の機械に50万ユーロ(73万ドル)投資し、そのおかげで畜牛の頭数を2倍に増やし、牛1頭当たりの搾乳量を10~15%増やすと同時に、飼料の無駄を減らすことができた。カーステン氏と彼のロボットのようなハイテク農家はオランダと世界の農業を変えつつある。

 欧州北部では、土地と労働力が高い。競争するために、オランダの科学者と企業、政府は常に緊密に協力し、生産性の向上と高価値の農産物の開発に取り組んできた。その結果、オランダのアグリビジネス大手インコテックが処理したトマトの種は、文字通り、同じ重さの金の2倍の価値を持つ。

オランダの農業輸出、国土が200倍ある米国に次ぐ世界2位

 オランダの乳牛は今、1960年当時の2倍の量の牛乳を生産している。その結果、オランダの農業輸出額は、国土がオランダの200倍もある米国に次ぐ世界2位になっている。

 オランダは現在、食糧を売るだけでなく、限られた資源と品質管理に不安を抱いている外国農家にその専門知識も売ろうとしている。カーステン氏のロボットを開発したのはレリーというオランダ企業で、同社は世界70カ国に輸出している。

 オランダの「フードバレー」の中心部に位置するワーゲニンゲン大学は今年2月、中国最大の乳製品メーカー、内蒙古伊利実業集団を丁重に歓迎した。消費者を外国ブランドに走らせたベビーフードスキャンダルに苦しんだ伊利は、研究開発の欧州拠点にワーゲニンゲンを選んだのだ。

 売れているのは食の安全だけではない。消費者は今、農家が優れた環境指針を採用しているかどうかも気にするようになった。この点では、オランダ農家はかつて評判が悪かった。オランダの国土の4分の1は海面下に位置する。開墾地は放牧牛向けの単作の「干拓地」に転用された。オランダは、島の大部分が岩から成るマルタのような国々と並び、欧州の中で最も生物多様性の低い国の1つだ。

 厳しい環境基準がないまま1970年代に農場が拡大し、生産性が高まった結果が、土地の劣化だった。平らな野原に絨毯爆撃のように堆肥と肥料をばら撒く悲惨な慣行が、土地と水を汚染した。