日本では安倍内閣が集団的自衛権行使容認を閣議決定したものの、反対論も根強く、国論は分裂している。他方で日本は、日米安保条約の下、核抑止力と攻勢的戦力は米国に依存することを防衛政策の前提としてきた。

 しかし、このような米国への依存が今後とも許されるか否かについては、日本国内で正面から議論されることはほとんどない。

 米国では今、法的に定められた2021年度までの国防費の大幅削減目標を前提に、大胆な戦略転換が検討されている。米国のシンクタンクCSIS(戦略・国際問題研究センター)では、過去2年間にわたり、大幅削減された国防費の総枠を前提とした場合の将来の米軍の戦力構造と採用すべき戦略について分析してきた。以下では、その報告文書の要約を紹介する。

1 米国の逼迫する財政事情とそれが国防政策に及ぼす影響

米陸軍を大幅縮小、1940年以来の水準に 国防長官が方針

国防予算について会見するチャック・ヘーゲル米国防長官〔AFPBB News

 米国の国防予算は、2010年度に戦費を含み7300億ドル(以下、予算額はすべて2013年度換算額)というピークに達した。その後2011年8月に発効した財政管理法(Budget Control Act)により、2012年度以降2021年度までの10年間で国防費は4870億ドルの削減が義務づけられた。

 しかし米議会で連邦予算削減案が合意できず、2013年3月に歳出強制削減措置が発効し、2013年度から2021年度までの9年間に4920億ドルの削減が新たに義務づけられた。

 このような財政事情を背景にCSISでは、上記の法律で定められた国防費削減を前提とした場合の、戦力構造の選択肢とその場合の米国のとり得る戦略について、過去2年間分析を進めてきた。その結果が報告書『2021年の危機回避可能な軍の建設(“Building the 2021Affordable Military”)』として、2014年6月に発表された。

 米国防省は、強制的歳出削減措置がとられた場合の影響について、深刻に憂慮している。今年出された米国防総省の議会に対する『4年毎の国防態勢見直し報告(QDR)』でも、強制的歳出削減措置が実行されれば、国家安全保障に「disastrous(破滅的な)」な影響を与えるとの記述がみられる。また、上からの強制的な削減枠が課せられているため、軍内での予算配分をめぐる内部的な緊張が高まっている。

 これまで国防費削減を前提とした米軍の将来採るべき戦略、作戦概念については、「統合海空戦闘概念」、「リバランス戦略」、「オフショア・コントロール戦略」などが提唱されてきた。

 しかしいずれも、予算の制約の中での具体的な戦力構造の積みあげを前提としたものではなく、まず戦略や作戦概念を考えてから必要な戦力構成、そのための予算を見積もるという手法をとっている。

 しかし今回のCSISの報告文書では、予算枠を前提として、現状を踏まえ、目標となる2021年度の歳出枠を見通し、その頃の戦略環境のもとで採りうる戦略方針を列挙し、その中で「最もましな戦略」方針を分析提示するという新しい手順を踏んでいる。

 その際に、現状としては削減前の2012年度の軍事力を、最終目標としては歳出強制削減措置のもとでの2021年度予算枠内の軍事力を設定している。その場合、2012年度の予算は6600億ドルだが、2021年度予算は5200億ドルとなり、額面で約21%の減額になる。

 ただし、今後長期的にはドル安になることが予想されるため、実質購買力はコストインフレにより2021年までに15%減額すると予想される。このため、額面の予算額が21%減額されるということは、実質購買力では31~32%の減額になる。

 国防費の上限枠を既定の事実として受け入れた場合、最大の問題となるのは、国防予算内での各分野への配分比率である。国防予算は大きくは、軍人の訓練、募集、維持管理などの制度的予算と、軍の近代化を進めるための研究開発や装備調達費などの作戦運用に関わる予算に分かれる。