(2014年8月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 ドイツは20日、戦後の伝統と決別し、イスラム過激派と戦うためにイラクに武器を供与することに同意した。アンゲラ・メルケル首相率いるドイツ政権は、兵器と弾薬を含むかもしれない武器の提供を検討していると国防相と外務相が述べた。

 ドイツの政策転換は、ここ数カ月でシリアおよびイラク国内の広大な地域を掌握し、何千人もの人を虐殺した「イラク・シリアのイスラム国(ISIS、イスラム国)」の脅威に対する西側政府の懸念の高まりを浮き彫りにしている。

ナチの過去に縛られるドイツ、国民の反発を招く可能性も

 英首相官邸によると、英国アクセントで話すイスラム過激派戦闘員による米国人ジャーナリストの「衝撃的で邪悪な」斬首の後、デビッド・キャメロン英首相は休暇を切り上げた。米国の政府当局は、ISISが19日に公開したジェームズ・フーォリー氏の処刑の動画が本物であることを確認した。

 ドイツにはナチの過去があることから、同国の世論は対外軍事介入に極めて神経質だ。フランク・ヴァルター・シュタインマイヤー外相はイラクへの武器供与を正当化し、イラク国家の崩壊はドイツと欧州に「壊滅的」な影響をもたらすと述べた。

過激派組織「イスラム国」戦闘員、シリアに推計5万人

欧州諸国が「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」の脅威に懸念を募らせ、イラクへの武器供与に動いている〔AFPBB News

 ドイツ政府は昨年、シリアに対する欧州連合(EU)の武器禁輸措置を解除することに反対した。解除すれば、シリアの穏健派だけでなくイスラム過激派も武装させる恐れがあり、武器を地域全体に拡散させることになりかねないと危惧したためだ。

 ドイツ政府は今、中東から戻ってくるジハード(聖戦)主義者を自国市民の安全に対する最大の脅威と見なしている。先週までは、政府はクルド人に非致死性の軍装備品を供給することだけを考えていた。

 政府の決断は、ドイツ国内で反発を招く可能性がある。ドイツは世界第3位の武器輸出国でありながら、長年、紛争地帯には殺傷兵器を供給しない政策を維持してきたからだ。世論は地政学的な危機に対する一切の介入に断固反対している。

フランスはISIS対策を議論するための国際会議を提案

 ドイツの判断と時を同じくして、フランスはISISと戦う方法について議論するための国際会議の開催を呼びかけた。

 「我々はこの集団と戦う世界的な戦略を策定しなければならない。ISISは組織化されており、潤沢な資金と非常に高度な兵器を持ち、イラク、シリア、レバノンといった国々を脅かしている」。フランスのフランソワ・オランド大統領はルモンド紙とのインタビューでこう語った。