(2014年8月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

iPhone 4S発売、日本やオーストラリアで長蛇の列

逆境に打ち勝ってキャリアを築いてきたソフトバンクの孫正義社長〔AFPBB News

 通信大手ソフトバンクの創業者にして億万長者、そして恐らくは日本で最も成功した米国流の起業家の例である孫正義氏は、逆境に打ち勝ってそのキャリアを築いてきた。

 孫氏は、英雄視する本田宗一郎氏に自らを重ねている。本田氏は、門外漢として自転車用のモーターを作り始め、結局、世界有数の自動車メーカーを築き上げた。

 孫氏は好んで、本田氏がいかに、自動車メーカーをトヨタ自動車のような一握りの国家を代表する企業に制限したがった日本の官僚たちに挑んだか回想する。本田氏は競合相手だけでなく、権力機構とも戦わなければならなかったのだ。

起業家、投資家として「ひらめき」を発揮してきた孫氏

 本田氏と同様、孫氏も破壊者だ。孫氏はかつて、自分の思い通りにならなければ、規制当局の本部に火をつけると冗談半分で脅したことがある。そして、孫氏はこれをやった(総務省を炎上させたのではなく、自分の意を通したということ)。

 2006年にボーダフォンの日本法人を買収した後、孫氏は日本の旧態依然とした通信独占企業を混乱に陥れ、消費者に多大な恩恵をもたらした。ソフトバンクは価格競争を仕掛けた。新たなサービスと製品も導入した。その1つがアップルの「iPhone(アイフォーン)」だ。孫氏は他の人が気付く何年も前に、洗練されているが孤立した日本市場をiPhoneがひっくり返すことに気付いていた。

 投資家としても、ひらめきの瞬間があった。孫氏が常識外れの金額を払った価値のない投資先の中には、いくつか本物の宝石がある。最も輝きを放ったのは、14年前のアリババに対する2000万ドルの賭けだった。いまや中国の電子商取引の巨人となったアリババは当時、ジャック・マー氏が生み出したばかりの新興企業だった。ソフトバンクは今、年内の新規株式公開(IPO)で1300億ドル以上の価値が付く可能性のあるアリババに37%出資している。

 孫氏は今、またしても賭けに出て、恐らくはその人生の中で最大のギャンブルの渦中にある。米国と戦おうとしているのだ。

 ソフトバンクは昨年、米国第3位の携帯電話会社スプリントの過半数の株式を取得するのに220億ドルを支払った。その目的は、業界全体をひっくり返す手段として下位の携帯電話会社を使い、日本でやったような「ボーダフォンをする」ことだ。