(英エコノミスト誌 2014年8月16日号)

トルコのためには、大統領職は主に儀式的な存在のままの方がいい。

トルコ首相、「エジプト政変の背後にイスラエル」

8月28日に大統領に就任するレジェップ・タイイップ・エルドアン氏〔AFPBB News

 トルコ首相のレジェップ・タイイップ・エルドアン氏は確実に、選挙で勝つ方法を知っている。公正発展党(AKP)の設立に一役買った13年前から、同氏は8回連続して勝利を収めてきた。

 8月10日には、トルコ初の直接選挙の大統領選を52%という圧倒的な得票率で制し、連勝記録を9に塗り替えた。概ね投票率が高く、概して公正だった選挙の結果を考えると、本気でエルドアン氏の民主的な信任に異議を唱えることなど、誰もできないだろう。

 在任11年に及ぶ首相としての功績も、それと同じくらい輝かしい。AKPが政権を握った2002年11月以降、経済成長率は平均およそ5%で推移してきた。インフレは抑制された。軍もしっかりした文民統制下に置かれた。トルコのクルド民族の権利拡大については、エルドアン氏は過去のどの政治指導者よりも大きな進展を遂げた。

 そして2005年には、歴代首相が誰一人として成し得なかったことをやってのけた。欧州連合(EU)と加盟交渉を始めたのだ。

独裁色強めるエルドアン氏、大統領として超長期政権も視野

 しかし、エルドアン氏がアンカラのチャンカヤ宮殿(大統領官邸)の主になることを憂慮すべき理由もある。軍と世俗的な支配階級、政界野党が皆、エルドアン氏を恐れるようになると、同氏は独裁色を強めていった。

 昨年夏、トルコの市民が街頭に繰り出し、ゲジ公園で抗議デモを行った際、同氏の取った対応は、催涙ガスを持った機動隊を出動させることだった。昨年、エルドアン氏の家族までをも巻き込む汚職スキャンダルが勃発すると、司法をより強固に掌握した。批判に対しては、エルドアン氏は自由なメディアや個々のジャーナリストを攻撃し(長年本誌=英エコノミスト=に勤務しているトルコ特派員も公然と攻撃された)、インターネットを検閲しようとした。

 こうした状況を一段と厄介にするのが、これまで儀式的だった大統領職に大きな権限を与えようとするエルドアン氏の計画だ。同氏は大統領職をフランスのように、行政権を持つポジションに変えたいと思っているのだ。

 その実現には憲法を改正しなければならず、憲法改正には通常、議会で3分の2の過半数が必要になる。AKPが単独でそれを達成できる可能性は低いが、クルド政党と取引すれば、必要な票数を確保できるかもしれない。