(英エコノミスト誌 2014年8月16日号)

西アフリカにおけるエボラ出血熱の感染拡大は、この地域にとっても、世界にとっても、大いに憂慮すべき事態だ。

エボラ流行規模は「過小評価」、WHOが見解

シエラレオネ・カイラフンの「国境なき医師団」運営施設で、エボラ出血熱の犠牲者の遺体を運ぶ防護服姿のスタッフ〔AFPBB News

 シエラレオネの東部を走る道路は、いつになく静まりかえっている。検問所には重装備の兵士が配備され、カイラフン地区とケネマ地区への出入りは完全に止められてきた。

 首都フリータウンに通じる幹線道路を通行しているのは、必需品を運ぶ少数のバイクと自動車だけだ。ケネマでは、いつもなら混み合うタクシー乗り場にほとんど人影が見られない。タクシーは、どこにも行く当てがないのだ。

 エボラ出血熱はこの地域にとって大打撃となった。原因は死者だけではない。連邦政府の隔離政策も原因の1つだ。ビジネスは落ち込み、村人たちは物資の不足を嘆いている。

 一方、非常事態が宣言された後でさえ、政府の予防措置は杜撰なものだ。エボラ出血熱の患者の治療にあたっているケネマの公立病院では、面会者が自由に行き来している。面会者が感染して病気を蔓延させるのを防ぐ予防策は、ほとんど講じられていない。

 今回の流行の「患者第1号」は、ギニアのある村に暮らす2歳の男児だったとされる。この男児が死亡してから9カ月以上経つが、流行は収まるどころか、ウイルスの勢いは増しているように思われる。

初めて都市部にも拡大

 西アフリカの感染者は2000人近くに達した。世界保健機関(WHO)によると、そのうち1000人以上が死亡したという。恐らく実数はもっと多いだろう。住民の中には、よそ者や政府当局を信用せず、家族が感染したことを隠している者もいるからだ。

 過去の流行とは異なり、今回の流行は、人口密度の高いナイジェリアの商都ラゴスなど、都市部にも拡大した。ラゴスは今後、大量感染の「ホットスポット」になりかねない。WHOは8月8日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。WHOが緊急事態を宣言したのは、今回を含めて過去3度しかない。

 緊急事態が宣言されたとはいえ、エボラ出血熱が世界的な大流行に至る可能性は低い。エボラ出血熱のウイルスに感染するのは、患者の嘔吐物や血液などに直接触れた場合だけだ。

 インフルエンザなど、空気感染する病気よりも感染力は弱い。エボラ出血熱の患者1人から感染するのは、通常1人か2人だけであるのに対して、2003年に初めてアジアで感染が報告されたSARS(重症急性呼吸器症候群)の場合は、1人の患者が新たに3人の感染者を生み出す。