8月5日の朝日新聞は、1面と16~17面を費やして慰安婦問題の特集を組んだ。中でも注目されたのは、彼らが「慰安婦は強制連行された」と主張した根拠である吉田清治の話を「虚偽だと判断し、記事を取り消します」と明確に訂正し、慰安婦が「女子挺身隊」だったという事実誤認も訂正したことだ。

 しかし社としての謝罪はなく、1面では杉浦信之編集担当役員が「慰安婦問題の本質 直視を」という署名記事を書いている。1982年から吉田の嘘を16回も報道しながら訂正しなかった新聞が「本質を直視せよ」という厚顔ぶりにはあきれる。本質を直視すべきなのは、朝日新聞である。

1本の記事が日韓関係を大混乱に陥れた

 2012年の当コラムでも書いたことだが、慰安婦は戦地にはどこにでもいた娼婦に過ぎない。それを日本軍の戦争犯罪に仕立てて世界中に嘘を広め、日韓関係を破壊した朝日新聞の報道は、メディア犯罪として戦後最大と言ってよい。

 朝日新聞の虚偽報道として有名なのは、1950年の伊藤律架空会見記と89年のサンゴ事件だが、実害の大きさは比較にならない。サンゴ事件では当時の一柳東一郎社長が引責辞任したが、今回は大誤報の責任者である植村隆記者が2014年3月に早期退職し、誰も責任を取っていない。

 植村氏は92年1月11日に「慰安所 軍関与示す資料」という記事で「従軍慰安婦」について次のように説明した。

一九三〇年代、中国で日本軍兵士による強姦事件が多発したため、反日感情を抑えるのと性病を防ぐために慰安所を設けた。元軍人や軍医などの証言によると、開設当初から約八割は朝鮮人女性だったといわれる。太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。

 

 この記事が「慰安婦の存在」と「軍の関与」と「強制連行」を混同したため、その直後に宮沢喜一首相(当時)が韓国政府に謝罪し、日韓関係が大混乱に陥った。

 特に「女子挺身隊」というのは女性を軍需工場などに動員する制度で、朝鮮半島にはなかったので、明白な事実誤認だ。これは私も含めて多くの人が指摘したが、今回の検証記事でやっと認めた。

 しかし朝日新聞は、これは意図的な捏造ではなく、「研究が足りなかったための混同」だという。本当だろうか。