(2014年8月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が欧米諸国の肉、乳製品その他の農産物の全面輸入禁止を発令してから24時間も経たないうちに、モスクワの裕福な買い物客、ドミトリー・コルニロフさんには、大統領に言いたいことが1つあった。このまま、いい仕事を続けてくれ、ということだ。

 エコノミストのコルニロフさんが、モスクワでも最高級の部類に入る、輸入品でいっぱいの食料品店で買い物をしたり、定期的に米国に出かけたり、爪の手入れを施してもらう前にフランス産白ワインのボトルを買うところだったことなど、気にしなくていい。ロシアの多くの人たちと同様、コルニロフさんは、プーチン氏が3段階にわたる西側の本格的な制裁に対応したのは正しかったと信じている。

「3度やられたら、やり返すのは当然」

 「街頭を歩いている時に誰かがやって来て、1度ではなく、2度でもなく、3度ばかにしてきたら、3度目は言い返すだろう」とコルニコフさん。「プライドを持つのは個人だけではない。国にもプライドがある」

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ウラジーミル・プーチン大統領の支持率はうなぎ登りで上昇し、87%にも達している〔AFPBB News

 一部の評論家や西側の外交官が非常に驚いたことに、プーチン氏の人気は過去6カ月間、同氏の危険な地政学的な賭けと歩調を合わせて上昇してきた。

 独立系世論調査会社レバダ・センターによると、米国と欧州連合(EU)の新たな制裁やマレーシア航空MH17便の撃墜、ウクライナ東部で再発した戦闘を背景に、プーチン氏の支持率は過去最高の87%まで急上昇しているという。

 大きな経済的痛みによって国民が愛国心の代償を払うことを余儀なくされれば、大統領の支持率が低下する可能性があると考えるアナリストもいる。欧州の食品の禁輸は、特に中産階級のモスクワ市民――2011年の終わりから2012年初めにかけて束の間の反プーチン運動で街頭に繰り出した人々――が影響を強く感じることになる。

 食品業界の専門家やエコノミストらは、禁輸は国中で食品価格、インフレ、供給に重大な影響を及ぼす可能性があると警告する。

国営テレビはロシア農業の販促キャンペーン

 だが、大統領はそうしたリスクをすでに検討し、大半のロシアの消費者、特に地方の人々はフランスの肉加工食品やラトビアのチーズがなくても生きていけると判断しているように見える。また、大半の経済的影響がすぐに感じられないことも期待しているようだ。

 ロシア国営テレビは7日、国内農業の販売促進キャンペーンに乗り出し、地元で採れた果物や野菜の価値を謳い、制裁が地元の生産者にとって恩恵になると強調した。番組では、単に農業だけでなく、機械など関連部門でも、すぐに何百という雇用が創出されると報じていた。