2014年の夏はソウルも蒸し暑い。不快指数も高いが、一般国民よりもさらに強くストレスを感じているのが財閥総帥かもしれない。

 2014年8月10日で、サムスングループの李健熙(イ・ゴンヒ=1942年生)会長が急病で倒れてソウル南部のサムスン総合病院に入院してから3カ月になる。

 病状は悪化してはいないようだが、意識は回復していない状態が続いている。「会長不在」が日常化し、グループ本部である未来戦略室、会長の長男である李在鎔(イ・ジェヨン=1968年生)サムスン電子副会長、各グループ企業の最高経営責任者(CEO)がそれぞれの役割を分担しながら経営にあたっている。

カリスマ会長の意識が戻らないサムスン、その間にも業績が悪化

韓国のサムスン電子会長、心筋梗塞で緊急手術

サムスングループの李健熙(イ・ゴンヒ)会長が急病で倒れてから3カ月経つ〔AFPBB News

 病床の会長の容態は分からないが、倒れてから3カ月間のサムスングループの経営を正確に把握していたとすれば、心配でたまらないはずだ。

 何と言っても、グループ最大の稼ぎ頭であるサムスン電子の業績が、徐々に悪化しているのだ。2014年4~6月期の業績が四半期ベースで9年ぶりの減収減益になった。

 営業利益は7兆2000億ウォン(1円=10ウォン)と依然として高い水準だが、前年同期比で25%減となった。特に、ここ数年の絶好調の決算を牽引してきたスマホ部門の利益は同3割減となってしまった。

 ここ数年間、世界で爆発的に普及したスマホ市場をサムスン電子はアップルとともに分け合って驚異的な利益を稼いできた。しかし、市場が飽和してきたことに加え、北京小米科技(シャオミ)、華為技術(ファーウェイ)など中国勢が100ドル台のスマホで大躍進した。

 このあおりでサムスン電子の快進撃が止まりつつある。

 「スマホの快進撃」はいつかは陰りが出るとは見られていた。ただ、李健熙会長からすれば、「自分が病床にあって陣頭指揮を執れないこの時期になるとは・・・」と言いたくなるはずだ。

 サムスン電子は、非常経営体制に突入した。不要不急の経費は削り、世界市場での在庫圧縮を猛ピッチで進めている。一方で、2014年の設備投資については、前年並みの24兆ウォンとする。「縮小経営」とは一線を画し、成長を目指す。