第4章  日本における対核防護の勧め

 我が国は、世界で唯一の核兵器被爆国であり、私は長崎における被爆者として国民一人ひとりが対核防護の意識を持たなければと思いここにペンをとった。

 今1つの理由は、脅しかもしれないが隣国北朝鮮の核開発と核実験やミサイルの発射などがここのところエスカレートしており、心しておくことが必要かと考えたからである。

1.事前の防護措置

 人員の防護は、できるだけ地下に潜ることである。すなわち、対核防護掩体の構築である。これは防護の3原則の「遮蔽」の効果が大きい。

 時間に余裕があれば、シェルターの構築である。非核保有国であるフィンランドなどは国策として構築しており、核爆発時の効果的防護である。

 地下道、洞窟、排水施設も良好なシェルターとなる。強化コンクリート製の地下、鋼材構築物も対核防護として適切である。物資などの防護には掩体か掩蓋構築物が有効である。

 特に現在「EMP効果」による無線機や発電機などの電線・電気関連の器資材が被害を受けやすいので事前に留意しなければならない。各種の工具やガソリン缶などは固定しておくことが必要である。

2.核爆発時の防護措置

 核攻撃(爆発)は、無警告の場合が多く、わずかな兆候も逃さず迅速な対応が必要となる。すなわち、最初の兆候は、日光よりも明るい強烈な光を発する。核爆発時は、光、熱、放射線が到達し、数秒以内に爆風が来る。

(1)暴露中の行動

ア、目・耳・口を手で塞ぎその場に伏せる。
イ、目を閉じる
ウ、熱線には、暴露した皮膚を防護する
エ、衝撃波が通過し、飛散物の降下がやむまで伏せておく
オ、冷静さを保ち、外傷点検(止血)、持ち物損害の点検を行う

(2) 負傷者の救護・・・応急処置

(3) フォールアウトの対策・・汚染降下物の到達、流動等の様相を見積もる

(4) 気象と地形を念頭に置いて、特に風向、風速を考慮して常に風上に避難する。地形では、遮蔽と凹地を見つける

3.核爆発後の防護措置

(1)核爆発後は、まず負傷者の救急・救命処置が必要である
(2)放射線は、五感では検知が不可能であり、検知測定器材が重要となる
(3)放射能の汚染状況を早急に把握する必要がある(汚染状況図の作成)
(4)放射性物質の除染は、洗い、振い、ブラシ、清掃などが重要である
(5)フォールアウトなどの粒子を物理的に除去する
(6)汚染水や汚染物の保管などの対策を講じる必要がある

4.器資材の充実

  最後に、個人として防護器資材などの準備を怠ってはならない(自助努力)。

(1)防護器資材・・・防護服、マスク、ビニール袋、警笛など
(2)検知測定・情報器材・・・放射線測定器、個人用線量計、スマホなど
(3)除染器資材・・・水、石鹸、タオル、ウエットテッシュなど
(4)応急救護器資材・・・マキロン(殺菌消毒薬)、包帯、サポーターなど

あとがき

 我が国の被爆者手帳の保有者は、厚生労働省の発表(2014年3月末現在)によれば20万人を割った、正確には、19万2719人となり、被爆者の平均年齢は、私と同じ79歳である。

 ちなみにピークは、1980年(昭和55年)の37万2264人であった。私と同じ被爆者援護法の1号該当者は、現在約12万4000人である。

 毎年春秋2回の健康診断を受診しており、正常人より白血球数が少ないが、健康に恵まれ、今後も被爆体験と対核防護の講演を続けたいと考えている。

 今年7月28日に米国のB29爆撃機「エノラ・ゲイ」搭乗員12人で最後の生存者セオドラ・バン・カーク氏が93歳で死去されたと「読売新聞」で紹介された。広島・長崎は、原爆被爆後69年、決して風化させてはならない。

 これからも平和な時代が続くことを念願しつつ・・・。

参考文献

1 NBCテロと市民の安全 NBCR対策推進機構専門家共著
2 あなたも狙われる「見えないテロ」 講談社+α新書
3 よくわかる核兵器の基礎知識(輸出管理のための大量破壊兵器2)
4 同上 (輸出管理のための大量破壊兵器シリーズ4)
5 核兵器のしくみ 山田克哉 講談社現代新書
6 核兵器と原子力  河出書房新社
7 北朝鮮に備える軍事学 黒井文太郎 講談社+α新書
8 原爆の話 出口輝夫 ゆるり書房
9 長崎原爆資料館 財団法人 長崎推進協会
10 民間防衛(あらゆる危険から身を守る) スイス政府編
11 核攻撃より生き残るための11ステップ カナダ国防省
12 米国対テロ現場対応心得 米国司法省・米国連邦危機管理庁
13 最終戦争「究極の核戦争」 学習研究社
14 核の脅威と無防備国家日本 矢野義昭 光文社
15 原子力傍観65年 森永晴彦著
16 放射能を考える(危険とその克服) 森永晴彦 講談社             17 やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識  田崎晴明著
18 放射能汚染の基礎知識 日赤長崎原爆病院院長 朝長万左男 
19 福島原発事故をめぐって 山本義孝 みすず書房
20 福島原発事故(内部被ばくの真実) 柴田義貞 長崎新聞新書          21 放射線測定と数値の本当の話 宝島社
22 生物・化学・核テロから身を守る方法 アンジェロ・アクイスタ著
23 放射能を怖がるな(ラッキー博士の日本への贈り物) 茂木弘道
24 RAcBIT(ラビット) RAE Systems
25 原爆写真「ノーモア ヒロシマ・ナガサキ」
26 その他、新聞、雑誌など